ブロント少尉、戦術的寝ぐせ対策
昼食時、隊員食堂に妙な緊張が漂っていた。 ──ブロント少尉が、なぜかヘルメットをかぶっている。 しかも顎紐までしっかり締めた完全装備。 いつも金髪ポニーテールを誇らしげに揺らしているのがブロント少尉。 明らかに異常事態だが、誰も何も言わない。 富士見軍曹は内心ため息をついていた。 (どうせまた、変なこだわりか何かだろう。もしかして……電磁波とか?) しかし、さすがに着帽のまま食堂に入るのはアウトだ。 注意しようと席に近づいた瞬間── カチッ、と音を立てて顎紐が外された。 無意識のまま、空腹に負けたブロント少尉が、食べるのに邪魔な(主に顎紐)ヘルメットを外したのだった。 その瞬間―― ぴょん、と一束の髪の毛が、そそり立った。 富士見軍曹「……」 他の隊員「……」 少尉(もぐもぐ)「……おいしい……幸せ……」 周囲の視線にもまったく気づかず、ブロント少尉は湯気立つご飯に夢中だった。 どうやら、あのヘルメットは「寝ぐせ隠し」のためのものであり── 当人はそれをすっかり忘れていたようである。
