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ミリシラ様の異世界百景その26「ハランバン城」
地球の皆の者、こんクエスト~!全知全能の大賢者「ミリシラ・シッタカブール」様じゃぞ! 今日は冒険者の探索先であるダンジョンの一つ「ハランバン城」に来ておる。危険度は最高レベル・・・というのは昔の話じゃ。今はだいぶ安全じゃのう。 このダンジョンは、魔物がこの世界に現れてからしばらくしてから忽然と現れた謎の城じゃ。恐らく魔物と同様に、空間の裂け目を通ってどこかの異世界から転移してきたと思われるが詳細は不明のまま。こちらに来た時点で既に古城の様相を呈しており、全くの無人かつ手掛かりになりそうな書物なんかも無かった。とはいえ、出現当初は誰もそんな事は分からんから、異世界人に会えたり異世界の宝物が手に入るかもしれないと、大勢の冒険者が挑み、そして死んだ。 主な死因はダンジョンに住む魔物ではない。ここにいた魔物は実体のないゴーストタイプで、魔法使いなら簡単にやっつけられるレベルじゃった。最大の危険は城のトラップだったんじゃよ。侵入者を阻むべく、あまりに殺意の高い罠が大量に仕掛けられておったんじゃ。 振り込刃が横から襲ってくるキャットウォーク。部屋全体に一定以上の重量がかかると部屋の出入り口が塞がれ、トゲの付いた吊り天井が落ちてくる部屋。ドアノブを回すと作動する串刺し落とし穴。長い階段で転がって来る大岩。特定の横棒に重量がかかると横から刃が飛び出す梯子。他にも挙げればキリがないくらい、即死トラップの大博覧会みたいな城じゃ。 そんなこんなで、どんどん冒険者が命を落とすものだからついに冒険者ギルドもごく一部の熟練冒険者以外は立ち入りを禁じる始末で、ワシらが攻略するまで禁忌級のダンジョンじゃったよ。ワシと狩人ローガン、剣士オーレルのいつもの三人に加えて、熟練の盗賊やトレジャーハンターを雇って五人体制で挑んだんじゃ。隠された攻撃用トラップはローガンが弓矢で撃ち抜き、吊り天井はオーレルが剣で破壊し、大岩はワシが魔法で吹き飛ばし、落とし穴や梯子のような偽装タイプの罠は盗賊に見抜いてもらって、トレジャーハンターの経験で正しい道順を探りながら進んだもんじゃ。それで何とか最深部の玉座まで行ったものの、本当に何にも実入りがなくてな。とりあえず、罠の仕組みが資料になるじゃろうと思って最深部から順番に罠を解除しながらどういう仕掛けだったのかを記録し、ギルドに提出して情報提供料をもらっただけで終わったわい。 そうした事があって、今はこの城にトラップは何も残っておらん。だから当時に比べれば比較的安全になったんじゃが別の危険が・・・あ、噂をすればいたわい。あの動く鎧型のアンデッド魔物が、今一番危険な要素じゃな。ほれ、冒険者が山ほど死んでおるからその無念が残ってしまってな。ここに元々いた魔物と混じり合って凶悪な怨念になり、城にあった鎧に宿ってしまったんじゃ。生きている者を逆恨みして、城で出会った者を誰であろうと切り殺すリビングアーマーになっておる。ちなみに、鎧の持っている効果なのか聖職者の聖術のような浄化系スキルや、魔法使いの光属性魔法といった本来のアンデッドの弱点を完全に無効にするので恐ろしく面倒くさいぞ。物理攻撃や光以外の魔法攻撃で鎧を破壊して中の怨念を露出させ、そこに今度は浄化系スキルや光魔法をぶち込まねば倒せんからな。 今回ここに来ておるのは、実は学者からの依頼でのぅ・・・異世界の建築様式を調べてみたいから城には傷をつけずにリビングアーマーを片っ端からやっつけて欲しいと言うんじゃよ。簡単に言いおって、まったく。こんな時に限ってキレーヌは他所の大陸に行っておるというし。まぁ、ぼやいておってもしゃあないか。ワシはこれから討伐に入るから、今日はここまでじゃな。 見てくれてありがとうなのじゃ、おつカブール~! ・・・あっ!?何かワラワラと出てきおった!大勢で来るとは騎士道精神の欠片も無い奴らめ!お、おのれぃ!全員根性叩き直してやるわー!
