エルフの入学式は戦場だ

「ふふっ、この私が入学式に緊張するわけないじゃない！」 主人公の名前はリフィア・シルヴェルナ。長い金髪を三つ編みにし、エルフらしい尖った耳を誇らしげに立てている。片手には新しい木製の剣を握りしめ、もう片手には入学案内の羊皮紙。今日から通うことになる学園、通称「アカデミア・グランアーレン」の門前で、彼女は誰に言うでもなくつぶやいた。 「おいリフィア、もうちょっと静かにしろよ。入学式始まるぞ。」 横から低い声で突っ込んできたのは、リフィアの幼馴染でドワーフのゴルド・ストンリッチだ。身長はリフィアの肩ほどしかなく、ずっしりとした体格がいかにもドワーフらしい。彼の手には小さなハンマーが握られ、腰には工具袋。どう見ても学園の新入生というよりは、ただの鍛冶屋見習いにしか見えない。 「静かにって何よ！ 入学式なんて人生の一大イベントでしょ？ もっと気合い入れていかないと！」 リフィアは胸を張り、勢いよく門をくぐる。 「いや、だからってその剣持ちながら突撃するなよ！ 冗談、顔だけにしろよ。」 「顔が冗談ってどういう意味よ！？ あ、でもちょっとわかるかも。私、美しすぎて冗談みたいってことだよね？」 「どこからその自信湧いてくんだよ……。」 学園の入学式会場は、巨大なドーム型の大広間だった。天井には魔法で作られた幻想的な星空が広がり、星が瞬くたびに生徒たちの歓声が響く。壇上では学園長のスピーチが繰り広げられているが―― 「うわぁ、すごい！ 星が動いてる！ これが学園の力……！」 リフィアは完全にスピーチを無視して天井を指さして大興奮だ。 「リフィア、お前ちょっと静かにしろって。みんな見てるぞ。」 「いいじゃない、雰囲気出てるし！ こういうのはね、感動するのが正解なの。恋と一緒だな。」 「恋の話なんて今関係ねえだろ！ お前、入学式だぞ！」 ゴルドが引っ張るも、リフィアの視線はあくまで天井の星空。どこか夢見がちで、現実を見ない彼女の性格が存分に発揮されている。 スピーチが終わり、新入生たちがそれぞれグループを作り出す中、リフィアは堂々と一人で立っていた。 「ふふん、どんな仲間と冒険することになるのかしら。やっぱり強くてカッコいい剣士とか、頼りになる魔法使いとか……。」 「おいリフィア、そういうの自分から話しかけないと無理だからな。」 「何言ってんの、ゴルド。運命の出会いっていうのはね、向こうから来るものなのよ！ 恋と一緒だな！」 「いや、来ねえよ！ 今お前完全に一人ぼっちだぞ！」 その時、後ろから声がした。 「そこのエルフ！ 剣士志望か？ 俺と勝負しないか？」 振り返ると、人間の少年が立っていた。短めの黒髪に鋭い目つきが特徴の彼は、いかにも自信満々な剣士志望らしい。 「勝負？ 面白いわね。いいわ、受けて立つ！」 「おいリフィア、入学式終わってからにしろよ！」 「だって、この場で実力を見せつけるのが一番手っ取り早いじゃない。」 その後、リフィアと少年の模擬戦が始まり、ゴルドが必死に止めに入るも、学園の新入生たちの注目を集めたのは言うまでもない。 こうして、リフィアの入学式は混乱と笑いの中で幕を閉じた。 学園の学び舎は、広大な森と湖に囲まれた静寂の地に佇む。そこに降り注ぐ陽光は、未来への希望を象徴するかのように輝き、新入生たちの胸に小さな火を灯す。 湖面を撫でる風は、これから始まる新たな物語を告げるようにささやき、森の木々はその証人として揺れる。空高く広がる雲は、彼らが歩むべき道のりを示唆し、どこまでも続く青空がその行く先を約束しているかのようだ。 リフィア・シルヴェルナ――エルフの戦士としての第一歩は、まだ拙く、どこか滑稽だが、その笑顔には確かな輝きがあった。彼女がどのように成長し、何を切り開いていくのか。その物語は、この大地が見守り続けるだろう。 そして、学園の鐘が再び鳴り響く――未来へと続く道を告げるように。