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セリヌンティウスまとめ
シラクスで真面目に、石工としてプライドをもって暮らしてた。 だが、ある日突然、悪友のメロスって奴が、自分のやらかしを王に咎められて、代わりにあたしを人質に差し出しやがった訳だ。つくづくクソい。 奴は、「戻ってくっからお前、ちょっと俺の代役頼むな」って口約束残して、勝手に帰省してやんの。 まあ、あのロクデナシを信じたあたしが悪かったんだが、当然のように戻って来ねぇ。ふざけんな。 あたしは磔刑台に上げられて、それでもワンチャン賭けたんだよ。あいつに蚊ほどの正義っていうか、人情っていうか、まあ、人として最低限のあるべき姿? ある訳ねぇ。 あいつは人じゃねぇんだ。赤い血が流れてねぇんだ。とことんクソでゲスで、カスでゴミだったんだ。それでもまだ上等な方だ。 ところが、ここの国王がまたアホだった。 磔刑台のセキュリティがガタガタにユルい。チョロい。誰でも突破できんだろこんなボロボロな十字架。監視もいねぇし。 まあ、逃げるわな。 なんか追っ手が来てるようだが、あたしに勝てる訳ねぇだろw 走力ならあのクソメロスよりはるかに上だぜ。もう、「走れセリヌンティウス」ってタイトル変えろよw とことん走って、どこまでも走って、逃げるのだけは得意なあたしだぜ。 だが、一度突っ走ったら限度を知らないあたし、ちょっと走り過ぎたようだ。 なんか様子が変だ。シラクスは脱出したが、一体ここはどこだ?あたしと一緒になって走ってるやつらとかいるし。楽しそうにすんなし。 やべぇ。 こんな賑やかな場所にいたら目立つだろ。大体がみんな、あたしと全然違う格好してるやん。 なんか、「ガッコー」とかいう場所らしい。「ゲンダイ」?「ニッポン」?そんなん知らんわ。 とりあえず、服をかっぱらってみた。そして身を隠す。少しは休まねぇと、この先身がもたねぇ。 だが!!! 何か変なヤツが来た! 変すぎる。メロスと違う意味で人じゃねぇ。目が血走ってる。完全にいっちゃってる。おまけにあたしの名前を連呼してるじゃねぇか! 自称メロスのニセモノ、「メロロロロロロス」。完全にやべーやつだ。王の追っ手とは違うようだが。 こんなバケモノに敵うはずがねぇ。あたしはとっとと捕まって、縛られて吊るされて、なぶられ放題。 地獄以外の何ものでもなかった。ああ、暗黒って、こういうことを言うんだな、なんてな。 でもあたしは希望を捨てなかった。勝者としてシラクスに帰ってやる! メロスのクソ野郎に一泡吹かせてやる。王のアホさ加減を民に知らしめてやる。 とりあえず、メロロロロロロスにはあたしを好き放題させてやった。こんなんで壊れるあたしじゃねぇ。シラクスがあたしを待ってるんだ。 変態にかまってる暇は最低限でいい。 そして、あたしは、帰ってきた。 シラクスの英雄セリヌンティウスとしてな。 仕事のオファーが殺到した。面倒くせぇ。あたしの本業は石工だろ。 だが、そんな地味な仕事なんかどうでもいいくらいに注目された。悪い気分じゃねぇな。 グッズも出た。飛ぶように売れたらしいが、あたしの手元にもはした金程度は入ってくる。食うには困らねぇ。 聞くところによると、メロスの野郎は、あたしが異世界を彷徨ってる間、ただ寝てただけじゃねぇか。クズ上等。一生寝てろ。 そう思った矢先だ。 図に乗ってたあたしに、罠が待ってた。 折角いい気分で寝てたところを叩き起こされて、連行されて、またもや牢獄で拘束されて。 仕掛け人はメロスの妹。メロスのクソ野郎、帰省するとか言っていながら、妹の結婚式すらサボってたらしい。 そんなん知らんわ。あたしなんかより、てめーのクソ兄貴を恨めよ。 あたしの人生、どうしてくれんだよ。 寝てんじゃねぇ、てめーが 「走れよメロス!!!」
