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UFOにキャッチされたエルフの戦士

エルフ戦士ユーフィリアと謎の円盤 人間の街の歓楽街。その一角にあるゲームセンターで、ひときわ甲高い声が響いていた。 「あーっ!またダメ!ドゥーガル、もう一回!お金!」 「知るか!さっき渡した銀貨で終いだと言っただろうが!」 長い金髪を揺らし、ガラスケースに張り付いているのはエルフの戦士、ユーフィリア。その隣で腕を組み、不機嫌そうに豊かな髭をいじっているのがドワーフのドゥーガルだ。 「だって、あのピンクのクマさんが私を呼んでるんだもん!『助けて、ユーフィリア』って!」 「そりゃお前の頭の中にだけ響く幻聴だ。そもそも、なんで俺がお前の娯楽に付き合わにゃならんのだ」 「えー?ドゥーガルがお金持ってるからに決まってるでしょ?持ってる人が持ってない人にあげるのは、森の掟よ」 「そんな掟はねえ!」 悪びれもなく言い放つユーフィリアに、ドゥーガルはこめかみの血管をピクピクさせる。こいつのこういうところが心底嫌いだった。 ユーフィリアが挑んでいるのは「UFOキャッチャー」と呼ばれる、クレーンで景品を吊り上げる魔法の箱だ。彼女はこの単純な遊戯に、故郷の森を魔獣から守るのと同じくらいの情熱を注いでいた。 「見てて、ドゥーガル!今度こそ取るから!アームの動きを読んで、重心を捉える…戦いの基本よ!」 「その集中力を依頼の方に向けられんのか、お前は…」 ドゥーガルが深いため息をついた、その時だった。 ゴゴゴゴゴゴ……! 突然、店全体が激しく揺れた。天井の魔法灯が明滅し、他の客たちが悲鳴を上げる。 「な、なんだ!?地震か!?」 ドゥーガルが身構えるが、ユーフィリアは全く動じていなかった。彼女は天井の一点を見つめて、目をキラキラと輝かせている。 「すごい…!天井が開いてる!」 彼女の言う通り、店の天井が円形にくり抜かれ、そこから目もくらむような強い光が降り注いできた。光の中心から、ゆっくりと何かが降りてくる。それは、ユーフィリアが遊んでいた機械のアームを何百倍にも巨大化させたような、金属製のクレーンだった。 「わーっ!すごいすごい!特大景品のサプライズ!?」 「んなわけあるか!馬鹿!」 ドゥーガルの叫びもむなしく、巨大なクレーンは正確にユーフィリアの頭上で止まると、ガシャッと彼女の体を掴んだ。 「きゃっ!?」 「ユーフィリア!」 「見てドゥーガル!私、選ばれちゃった!一番の景品は私だったんだ!」 満面の笑みで手を振るユーフィリアは、そのまま光の中へと吸い上げられ、天井の穴の向こうへと消えていった。残されたドゥーガルは、呆然と天井を見上げるしかなかった。 「……あいつ、アホのまま天に召されたぞ」 ふと、ユーフィリアは目を覚ました。 ひんやりとした金属の台の上に寝かされている。周りを見渡すと、そこは継ぎ目のない白い壁に覆われた、だだっ広い部屋だった。 (あれ…?ピンクのクマさんはどこ…?) きょろきょろしていると、ぬっと影が差した。見上げると、そこにいたのは人間でもドワーフでもない、奇妙な生き物たちだった。 灰色でつるりとした肌。痩せた体に、大きすぎる頭と、吸い込まれそうなほど真っ黒な瞳。いわゆるグレイタイプの宇宙人である。彼らは無言でユーフィリアを取り囲み、じっと見下ろしている。 常人なら恐怖で失神する場面だが、ユーフィリアは違った。 「わあ、あなたたちがお店の人?はじめまして、私ユーフィリアっていうの。よろしくね!」 にこやかに挨拶するユーフィリアに、宇宙人たちは一瞬、動きを止めたように見えた。彼らは顔を見合わせ、ピポパ、と電子音のようなもので会話を始める。 「あなたたちもエルフの一種?耳は尖ってないけど、目が大きくて可愛いね。でも、ちょっと無愛想じゃない?」 宇宙人の一人が、注射器のようなものを持って近づいてくる。 「あ、それなあに?もしかして、景品のクマさんに綿を詰めるやつ?」 何をされるのかも理解せず、ユーフィリアは興味津々だ。宇宙人は戸惑ったように、仲間のほうを振り返る。ピポパ、ピポパポ。 やがて、彼らは諦めたように、ユーフィリアの体にペタペタと吸盤のようなものを取り付け始めた。目の前のモニターに、彼女の体の内部構造らしきものが映し出される。 「へえ、私の中ってこうなってるんだ。骨の数、ちゃんと足りてるかな?」 「ピ…」 宇宙人たちは、この予測不能なサンプルにすっかり調子を狂わされているようだった。彼らは当初の予定だったであろう「恐怖に怯える地球生命体の生態観察」を諦め、早々に分析作業を済ませると、ユーフィリアの額に何か冷たいものを当てた。 途端に、強烈な眠気が彼女を襲う。 (あれ…なんだか…眠く…なってきた……ピンクの…クマさん…) 意識が遠のく直前、ユーフィリアは宇宙人の一人が、大きな真っ黒な瞳で、ため息をついたように見えた。 次にユーフィリアが目を覚ました時、彼女は故郷であるエルフの村の、自室のベッドの上にいた。 「…あれ?」 体を起こすと、見慣れた天蓋が目に入る。窓の外からは、小鳥のさえずりが聞こえてくる。 (夢だったのかな…?) ぼんやりと窓の外に目をやると、朝焼けの空の彼方へ、銀色の円盤がすーっと消えていくのが見えた。 「あ!」 見間違いではなかった。 「――というわけで、私、UFOにさらわれちゃったの!」 翌日、ドゥーガルの鍛冶場に押しかけたユーフィリアは、身振り手振りを交えて熱弁した。 ドゥーガルはカンカンと鉄を打ちながら、聞いているのかいないのか、生返事を繰り返す。 「ほう」 「宇宙人さんたち、すっごくシャイだったけど、きっといい人たちだよ!私を特大景品に選んでくれたんだから!」 「そうか」 「でも、ピンクのクマさんはくれなかった。それがちょっと残念」 ようやく槌を置いたドゥーガルは、汗を拭い、心底呆れ果てた顔でユーフィリアを見た。 「おい、ユーフィリア。お前、自分の頭が心配になったことはないか?」 「え?ないよ?私の頭はサラサラの金髪で満たされてるもん」 「だろうな。いいか、よく聞け。お前さんが体験したっていうのは、十中八九『フォールスメモリー』、つまり虚偽記憶だ」 「ふぉーるすめもりー?」 聞き慣れない言葉に、ユーフィリアは首を傾げた。ドゥーガルは、どうしようもない馬鹿に教えるように、ゆっくりと、しかし容赦なく説明を始めた。 続きは小説へ

コメント (6)

うろんうろん -uron uron-
2025年08月15日 14時47分
五月雨
2025年08月15日 13時58分
へねっと
2025年08月15日 10時04分
ガボドゲ
2025年08月15日 03時48分
もぐっちー(mogucii)
2025年08月15日 00時36分
謎ピカ
2025年08月14日 23時19分

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