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秘密の虹

2025年05月30日 15時00分
対象年齢:全年齢
スタイル:イラスト
デイリー入賞 147
参加お題:

雨が上がったばかりの放課後。 校舎の裏手、濡れた芝生の上で、紫峰怜花はぼんやりと空を見上げていた。 「……出てる、わね」 灰色だった空に、ほんのりと七色のアーチがかかっていた。 「先生、いましたか」 背後から、静かな声。振り返ると、狭霧華蓮が傘をたたみながら近づいてきた。 「虹、見てたんですか?」 「ええ。……昔は、虹の端を見つけたら宝物があるって思ってたの」 「今でも、ありますよ。宝物」 「え?」 華蓮は隣に並び、スカートの裾が濡れるのも気にせず、そっと手を差し出した。 その手には、小さなプリズム。 「理科準備室で見つけました。古い実験用の。……ちょっとだけ、お借りして」 光が射した。 プリズムを通って、ふたりの足元に、小さな虹ができた。 「ね、言ったとおりでしょう? ここにも宝物」 「……ほんとだ」 怜花は笑った。 虹が空にも、地面にもある。誰かと分け合える虹なんて、初めてだった。 「先生。虹って、どうして七色か知ってますか?」 「んー……光の波長の関係?」 「そうですね。でも、“七”と数えるのは、日本人の感性なんだそうです」 「そうなんだ?」 「国によっては三色だったり、六色だったり。“見える”と“感じる”は違うんです」 怜花はその言葉を、少しだけ胸の奥で転がす。 「……じゃあ、私たちが“きれいだな”って思うこの虹も、全部、錯覚かもしれないのね」 「でも、“きれいだ”と、ふたりで思えたら、それはもう真実です」 そう言って、華蓮はそっとプリズムを手渡してきた。 「……一緒に見ると、世界ってちょっと広くなりますよね、先生」 怜花は、虹のように優しいその言葉に、心がふわりとほどけるのを感じた。 空の虹はもう薄れていたけれど、足元には、まだ七色のかけらが残っていた。

コメント (4)

五月雨
2025年05月31日 12時44分

ピッカ

虹!?レアスタンプでた⤴

2025年05月31日 12時50分

九一
2025年05月31日 05時10分

ピッカ

2025年05月31日 12時48分

謎ピカ
2025年05月31日 01時08分

ピッカ

2025年05月31日 12時47分

タカ
2025年05月30日 23時26分

ピッカ

2025年05月31日 12時47分

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