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【ホタル】ラファエル様のゲリラ雑談「ホタル」
ハローヘイロー地球の皆様、義眼の聖女「ラファエル」です。何だか随分と皆様にお会いするのも久しぶりに感じます。 今日は、この季節になると見られる風景をお届けしようと思いまして森へやって来ています。ミリシラ様、どうでしょう?私の目では分からないのですが、期待通りの風景でしょうか? 「うむ、問題ないのぅ。ちゃんと今年も飛んでおるわい。お主の目では光が見えんから、虫が飛んでおる事は分かってもそれがホタルか分からんのじゃろ?惜しいな、色や光が分かればお主にも気に入ってもらえると思うんじゃが」 ふふ、大丈夫です。私の目に美しい風景が映らずとも、地球の皆様の目に届いていれば良いのですから。さて、ミリシラ様が今おっしゃったように、この時期にはホタルという光る虫が森に現れます。 「この虫は綺麗な水のあるところにしかおらんからな、人の生活域では生活排水の影響で見られんのじゃよ。さらに近年数が減っておってなぁ、今では採集する事も違法行為じゃ」 そんなに捕まえて持ち帰りたくなるほど綺麗な光を放つのですか?きっと幻想的な風景なのでしょうね。 「いやー、そんなのどかな話じゃないわい。このホタル、体内の成分を反応させて光るんじゃがな。その成分を取り出して、いくつかの薬草や鉱石から採取した粉末と混ぜると便利なアイテムになるんじゃ」 便利なアイテム・・・ですか? 「うむ。主に冒険者が使うんじゃが、地面に叩きつけるとその衝撃がトリガーになって一瞬視界が真っ白になるほど強い光を放つんじゃよ。これで魔物の目を眩ませて、その隙に強力な攻撃を狙ったり魔物から逃げたりできるんじゃ」 まあ。ではもしかして、そのアイテムを作るためにたくさんのホタルが捕まえられたのでしょうか。 「まあ単純に人間の開発が進んで、ホタルの生息域が狭くなった事も原因なんじゃが。冒険者が閃光玉を作るために乱獲したのも間違いなく一因じゃな」 どんな生き物でも命は命。最初はホタルに感謝して作っていたのでしょうが、徐々に生産性を優先してホタルの命を軽んじてしまったのですね。忘れてはならない歴史の一つでしょう。 「だからこそ、今はホタル採集が違法行為じゃからな。ちなみに現在はホタルの発光成分に取って代わる魔法薬が開発されたので、閃光玉自体は材料を変えて現存しておるわい」 ではもう、そういった密猟でホタルが脅かされる事は無くなったのですね。綺麗な水のある環境でしか生きられないなら、持ち帰っても長く生きられないのでしょうから。 「そうじゃな。だからこの時期になると森にホタルを見に来る人間も大勢いる。ま、夜の森には魔物も多いので冒険者に護衛依頼が来る事もあるがな。今も昔も冒険者はホタルを利用して飯を食っておるというワケじゃ」 それもまた、命の共生の一つの形ですね。あ、ミリシラ様。あの川にはたくさんいるようですよ。 「あ~、おいラファエル、水にざぶざぶ入っていくでない。・・・まあ良いか、ラファエルを襲う生物などおらんからなぁ」 こうしてたくさんのホタルが舞う光景を、これからも守っていきたいですね。 「・・・そうじゃな。一説によるとホタルはこの世界に魔物が現れるよりも前、旧文明の時代からずっとおったらしいからのぅ。ワシらの代で絶滅させるなんて事が無いようにしたいもんじゃ」 できますよ、一人一人がしっかりと環境と未来の事を考えて生きていくのなら。自分以外の命を慈しむ、優しい心を持ってこの世界を歩むなら。きっと、できます。 「お主が言うと、何だかその通りになりそうな気もするわい。さ、そろそろ帰ろう。温かい季節とは言え、夜の森でずぶ濡れでは体に障るぞ」 分かりました、では引き上げましょう。地球の皆様も、ご覧いただきありがとうございました。もし皆様にも愛する風景があるのなら、それを守るために何が出来るのかを考えてみてくださいね。その行為はきっと、あなたの心を穏やかにしてくれます。 それでは失礼いたします、さよなラファエル~。
