月夜の番人/スマホ壁紙アーカイブ
【月夜の番人】 その夜、山々は静かだった。風も鳥も、音を潜めていた。 満月が空を征し、銀色の光が峰々を照らす。 その光の下、彼は現れる。 名も、声も持たぬその影は、闇を纏い、ただそこに立つ。 彼は「番人」── この世とあの世の狭間をさまよう者たちが道を誤らぬよう、 満月の夜だけ、現世に降り立つ。 剣も持たず、言葉も放たず。 ただ「在る」ことで、守る。 誰も知らない。 誰も気づかない。 けれど彼が立つことで、 この世はまだ、わずかに整っている。 そして夜が明けると、 影は霧と共に、ふたたび消えた。
