月読の系譜/スマホ壁紙アーカイブ
【月読の系譜】 彼女の名は知られていない。 ただ「月読の継承者」とだけ、古い巻物に記されている。 満月の夜ごとに山頂に立ち、風の声を聞き、剣を月光にさらすのがそのしきたり。 彼女の一族は、かつて月の神・月読命(つくよみのみこと)から「影を断ち、静けさを護る力」を授かったという。 戦う相手は人ではない。 それは人の心の闇、言葉にされない怒り、忘れられた悲しみ。 彼女はそれを「夜の獣」と呼び、黙して斬る。 誰も彼女の剣が動く瞬間を見たことがない。 ただ、夜明けには空気が澄み、村に笑顔が戻るという。 そしてまた、誰も知らない月夜の高みで、彼女はひとり静かに立ち尽くす。 月に背を向けず、しかし、誰の目にも見えぬ存在として。
