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【オッドアイ】恋人の姉
「おおっ、早渚さんじゃないですか」 私がスーパーで買い物をしていると、綺麗なオッドアイの女の子が私の名前を呼びました。一瞬誰か分からなかったのですが、すぐに向日葵ちゃんだと思いつきました。 「こんにちは、向日葵ちゃん。目、どうしたのそれ」 「目?・・・あ、やべ。カラコン入れっぱなしでした」 向日葵ちゃんは本来両目ともグリーンの瞳ですが、今日は左目だけが青色です。何かのコスプレで片目だけカラコンを入れてたのを取り忘れたのかもしれませんね。 「しっかり者の向日葵ちゃんにしては可愛いドジだね」 「・・・早渚さん、当たり前のように可愛いをつけてきますね。瑞葵の彼氏になったんならもうちょっと他の女の子とは・・・いや、すみません。私のせいですよね」 何だか少し元気をなくした様子の向日葵ちゃん。私と彼女はそれぞれ買い物を終え、鈴白家へ向かいました。私としては特に鈴白家に用事は無かったのですが、買ったものが特売の油だけだったのと向日葵ちゃんの様子が気にかかったものでついて行くことにしたのです。 「あの日、勢いで強引に二人をカップルにしてしまいましたけど、それって本当は私が口出しするような事じゃなかったですよね。早渚さんは早渚さんなりに瑞葵の事を大切にしてるのは分かっていたし、急ぐ必要とかなかったのに。瑞葵が本当に早渚さんの事を好きなのかとかも確認しないで進めてしまいました。本当にすみません」 「ああいや、確かに強引だったとは思うけど。向日葵ちゃんが言うように一回恋人になったからって生涯のパートナー確定って訳でもないし、他の女性との縁も切れたわけじゃないからね。むしろ、私との間に色々(えっちなイベントとかが)あったのに好意的に受け止めてくれる人が多くて驚いたくらいだよ」 「そうですか・・・早渚さんの周りの人は皆いい人ですね。・・・それで、瑞葵とはどうなんですか?」 「あ~・・・それがですね、実は特に付き合う前と変わらないん、です、けど」 「それは早渚さんと瑞葵の距離感がバグってるからです。普通無いですよ、恋人になる前に一緒にお風呂で洗いっこなんて」 ですよね。玄葉にも散々言われてるしなぁ、距離感。 「とりあえず、瑞葵と上手く行かなそうだったり行動に困ったりしたら私を頼ってください。一番瑞葵を近くで見てきた人間として相談に乗りますよ」 「ありがとう、向日葵ちゃん」 さて、そんな話をする内に鈴白家へ着きました。私は向日葵ちゃんが家に入るのを見届けて帰るつもりだったのですが、向日葵ちゃんとしては「こんな暑い日にただ歩かせて帰すなんて悪いです」という事で家に上げたいとの事。まあ、私から見ても恋人の自宅な訳だからあまり遠慮するのも変かな。そう思って上がったのですが。 「あっ、凪さん。こんにちは」 私は自分の目を疑いましたね。そこにいたのはうさ耳を付けた瑞葵ちゃんでした。いやそれは良かったのですが、それよりも問題なのは服装です。上半身がほぼ何も着てない状態で、胸を隠しているのは暖簾のように垂れ下がった布地だけなのですから。 「み、瑞葵ちゃん・・・なんてえっちな、じゃなくていやらしい、でもなくて・・・うんもうえっちでいいや。なんてえっちな格好してるんだい!」 「瑞葵バカタレ、あんたねそれ本来はアンダーシャツの上から着る部分でしょうが!」 ああ・・・この衣装向日葵ちゃんが作ったのか。で、本来は他の服の上に着る想定だったと。そうだよね、じゃなきゃただ単にエロ衣装だもんこれ。 「だってあんなぴっちりした服着たら暑いもん。凪さんも下に服を着てるよりこっちの方がいいと思いませんか?」 「それは激しく同意するけど、そもそも人に見せる格好じゃないでしょう」 「おねーちゃんはおねーちゃんだし、凪さんは恋人だからセーフでは?」 「なるほど、これは一本取られた」 「一本取られた、じゃないですよ?早渚さん・・・」 あっ、向日葵ちゃんが怖い。顔は笑ってるけど、その握った拳とぴくぴく震える肩がはっきり怒りを伝えてくる。 「ふふ、凪さんはこの格好気に入ってくれたみたいですね。実は色違いもあるんですよ♪」 そう言うと瑞葵ちゃんはたたっと部屋を走り出ていきます。急に動くとあの薄布がひらりとなびいて、隠された部分が見えそうで目が離せない。どうしてだ、単なる裸よりもずっといやらしく感じるのは。 「じゃーん、こっちは黒バージョンです」 「おおー、黒色もいいね。瑞葵ちゃん普段から黒下着だし、やっぱり黒だと瑞葵ちゃんの白い肌や銀の髪とメリハリが効いて似合うよ」 「早渚さん、早渚さん。違う違う、そうじゃないです」 向日葵ちゃんが何か言ってるけど、正直私の注意力は今や瑞葵ちゃんの方に振り分けられてます。いや、この格好した恋人から目を離せるわけないでしょ。 「ふふーん、実はもう一つあるんですよねー」 「ちょ、瑞葵!?あんたまさかアレを・・・!」 向日葵ちゃんが止める間も無く、瑞葵ちゃんはまた着替えに行ってしまいました。 「わくわく」 「早渚さん!わくわくしながらカメラを用意しない!」 向日葵ちゃんが私にしがみついてカメラ準備を阻止しようとしますが、そこはやはり瑞葵ちゃんと違って非力な向日葵ちゃんの事。私を止められるはずありません。・・・あれ、この感触はもしかして、向日葵ちゃん胸のパッド一枚増量したのかな?でも指摘すると殺されそうだからやめとこう。 「えへへー、お待たせしました♡」 ぴょんと部屋に入ってきた瑞葵ちゃん。色は同じく黒系でしたが、何と透け感のある素材でできていて大変セクシーです。胸の所だけ絶妙に色が濃くて、ちゃんと隠せてるのが芸術的。私が写真撮ってる間も向日葵ちゃんが叫んでいます。 「だあああ!もう瑞葵、いい加減にしなさいっての!そういうのはTPO考えてやれ!」 「えー。でも初彼氏が家に遊びに来てくれてるのにサービスしないのも変じゃない?それに凪さんもすっかりその気みたいだし」 「おい早渚さん」 「あー・・・ごめん向日葵ちゃん、ちょっと一時間くらいお出かけしててもらえると嬉しいんだけど」 「今この状況でその要求が通ると思いますか!?あーもう、冷えた麦茶出すんでそれ飲んで頭と下半身落ち着かせて帰って下さい!」 向日葵ちゃんに怒られ、私は早々に鈴白家を追い出されました。いかんいかん、冷静さを欠いていた。反省せねば。 「・・・あ、結局何に使う衣装なのか聞くの忘れた」 まあいいか。暑い中いつまでも外にいても仕方ないし、私も帰ろう。
