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【枕】魅惑の感触
晶さんが、ちょっと私に試して欲しいものがあると言うので金剛院邸にやってきました。すると晶さんが持ってきたのは枕。 「晶さん、それは?」 「ええ、特注の枕ですわ。感触を確かめていただきたいの」 晶さんが手渡してきたそれを、撫でまわしたり揉んだりしてみます。肌触りはすべすべで吸い付くような触り心地。弾力はしっかりしてて、やや硬めな印象を受けます。枕の事は詳しくありませんが、多分いい素材で出来てるんだろうな。と、枕を確かめる私を晶さんがじっと見ている事に気付きました。 「晶さん?」 「どうでしょう、その感触。お気に召しまして?」 「そうですね・・・あまりよく分かりませんが、いい素材ですよね。肌触りが良くて、顔を埋めたら気持ち良さそうです」 感想を伝えると、晶さんはうんうんと頷いています。続けて、別の枕を一個取り出しました。 「では、こちらはどうでしょうか?」 「何か違いがあるんですか?」 「触ってみればお分かりになるかと」 確かにその通りです。私は二個目の枕を受け取って、一個目と同じように感触を確認します。こちらはさらさらとしていますが、弾力は柔らかく、指が簡単に沈み込みます。でも手を離すとすぐに元の綺麗な形に戻る、絶妙な弾力です。・・・あれ、この枕の感触何か覚えがあるような。 「どうでしょう、一個目の方と比べてどちらが好みですか?」 「うう~ん・・・難しい質問ですけど・・・何となく、この二個目の方が馴染むような気がします」 「ああー!お嬢様本当にやってる!」 突然後ろから花梨さんの叫び声が聞こえ、私は飛び上がりました。花梨さんはつかつかと私の傍まで歩いてくると、私から枕を取り上げました。 「早渚さん、これが何か説明されました?」 「い、いえ。ただ、感触を確かめて欲しいと言われたので、触ったり揉んだりしてその感想を伝えたんですが」 「ああ~!お嬢様、何やらせてるんですかもう!」 何だなんだ、何かまずかったのかな。晶さんは悪戯っぽく笑いながら、花梨さんに言葉を返します。 「桜一文字、早渚さんはそちらの枕の方が馴染むそうですわよ」 「でしょうね!あれだけ散々触ってんですから!」 「触ってる?」 全然話が見えない。ちょっといい加減に説明して欲しいな。 「晶さん、この枕は何なんです?」 「ふふふ、これはわたくしと桜一文字の『胸の感触』を再現した枕ですわ!」 思いっきりむせました。なんてもん開発してんだこのお嬢様。 「ちなみに一個目がわたくしの胸、二個目が桜一文字の胸です」 「胸じゃなくて『胸の感触を再現した枕』って言ってください!だいたい何で早渚さんに試させるんですか!絶対コマメのセンサーの方が正確でしょ!」 「桜一文字もコマメも口を揃えて『早渚さんはおっぱい星人』と言うでは無いですか。そこまで言うなら、ぜひ試してもらおうと思いまして。再現できているかどうか評価していただくのにぴったりの人材ですわ」 晶さん・・・ていうか花梨さんとコマメちゃんの中の私ってそんなに『おっぱい好きなエロカメラマン』って印象根付いてるの?最悪過ぎる。身に覚えない・・・こともないけど、そこまで言われるほどじゃないのに。 「それで、いかがでしたか早渚さん。ちゃんと感触、再現できていました?」 「コメントしづらいですよ!・・・まあ言わせてもらうと、一個目の枕の方は分からないです。だって私、晶さんの胸揉んだ事無いですもん」 「確かにそうですわね・・・ん?と言う事は早渚さん、桜一文字の胸は揉んだことがおありで?」 「まあその、はい。ちょっと言いづらいんですがこの間ラブホテルで花梨さんと寝た時、胸が露出してたんで服を整えるのに触りました」 ちらっと花梨さんの方を見ると、『あ、やべ』という顔をしてました。 「ラブホテル・・・?ちょっと桜一文字?わたくし聞いていませんけど。まさかこの間の外泊の時ですの?」 「一応言っておきますけど、水着姿で撮影会しただけですからね!あとちゃんと瑞葵さんの許可も取ってます」 花梨さん、晶さんに言ってなかったか。なんか雲行きが怪しくなりそうなので、私は枕感想の続きをいう事にしました。 「に、二個目の枕の方はかなり再現率高かったと思います。馴染むって感想が出てきたくらいですからね。まあ感触に馴染みがあるのは花梨さんが関節技かける時、ほとんど決まって私に胸を押し付けるような技ばっかり使うせいもあると思いますが」 「まったく、桜一文字はふしだらですわね」 「仕方ないでしょ!これだけ大きいと当たるんですよ、ヘッドロックだろうが腕ひしぎ十字だろうが!」 逆エビ固めとかにすればいいんじゃないかなと思いましたが、いずれにせよ私が痛い目に遭うのは確定なので、それなら胸の当たる技の方がまだマシかなと思い直して何も言わない事にしました。 「というかですね、晶さんなんでこんな枕作ったんですか!」 「コマメが『パパは女性の膝を枕にするよりも女性の胸を枕にしたいと常々思っているようです』と言っていましたので、そこから着想を得たのですわ。流石に形状を再現するとアダルトグッズになりますから、感触だけの再現ですけど」 「嘘でしょ!?私そんな事コマメちゃんに言った事ありませんが!?」 「ログ見る限りは確かに言ってないですね。でも思ってますよね」 断定しないで欲しい。確かに女性の胸に顔埋めて眠りたいと思う日もあるけど、そんないつもじゃないです。 「思ってない、です」 「へー」 花梨さん一ミリも信用してない顔じゃん。 「では早渚さん、協力いただいたお礼として、この枕どちらか一つ差し上げますわ。お好きな方をどうぞ」 「選び辛い!」 これ要するに、晶さんと花梨さんのどっちの胸が好きか言うようなもんじゃん! 「もし一個目の枕の再現度に疑問があるようでしたら・・・少しくらいなら、よろしいですわよ?」 晶さんがそっと私に胸を差し出します。この状況で揉めるわけないでしょ。 「お嬢様、ふしだらなのはどっちですか」 「花梨さんの言う通りですよ。それに、枕をいただくのは遠慮しておきます」 「あら?よろしいのですか?」 私は枕をお断りする事にしました。どっち選んでも角が立ちそうだし、 「それに所詮は枕。本物の感触には勝てません。直に肌で感じる体温や心音、それにフェロモンって言うんですかね、あの独特な匂いや何より女性の反応。視覚的な興奮も重要ですし、私の性癖的には背徳感も欠かせな・・・あれ?」 ・・・やばい。途中から声に出てた。晶さんと花梨さんが赤くなってる。 「ほらお嬢様、聞きました今の。まごうことなきおっぱい星人ですよ」 「そのよう、ですわね。たかが枕でご満足いただけると思っていたのは大間違いでしたわ」 「あっ、いや今のは違います!口に出すつもりはなかったやつで」 慌てて弁解しようとする私を、花梨さんは冷ややかに見つめます。 「じゃあ思ってはいたんですね。どうやら、早渚さんが一番ふしだらみたいですね~」 「えっちっちーのチーですわ・・・」 ・・・最終的に、この日は私がただヤケドしただけの話でした。
