きのこライトが灯す秘密の谷/スマホ壁紙アーカイブ
【きのこライトが灯す秘密の谷】 夜更けの風が山肌をすり抜けるころ、谷は静かに目を覚ましていた。 巨大なキノコたちがぽつり、ぽつりと灯りをともすように淡く光りだし、 やがて谷全体が青と橙の光に包まれる。 小屋の前に立った旅人は、思わず息を呑んだ。 昼にはただの岩だと思っていた壁の奥から、光の粒が湧き出すように漂いはじめる。 それはまるで、谷が誰かを待っているかのようだった。 キノコの傘に落ちた露が光を反射し、星より近くで瞬く。 旅人は足元に伸びた小道を見つける。 昼にはなかったはずの道── いや、光がないから見えなかっただけなのかもしれない。 光るキノコたちが導くその道の先には、 谷に古くから伝わるという「夜だけ現れる湖」があるのだという。 旅人は胸の奥が高鳴るのを感じながら、一歩を踏み出した。 谷は静かに、確かに、彼を歓迎していた。
