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閃光のミラージュ 超番外編 【荒野のだるま落とし】
果てしなく続く荒野に、異様な影がそびえ立っていた。 風に削られた大地の中央―― そこに鎮座するのは、木製の巨大なだるま落とし。 一番上で睨みを利かせる赤いだるまが、挑戦者を値踏みするかのように見下ろしている。 「……面白いじゃない」 紫苑は肩にメイスを担ぎ、軽く笑った。 戦場で幾多の修羅場を越えてきた彼女にとって、この荒唐無稽な挑戦は遊戯に近い。 だが、だからこそ本気だ。 一歩踏み込み、足場を固める。 視線はただ一点――だるま落としの“芯”。 次の瞬間、唸りを上げて振り抜かれるメイス。 ドンッ! 衝撃とともに木片が弾け飛び、地面が揺れる。 空中に舞い上がるだるまの顔が、驚愕に歪んだ。 「まだまだ!」 紫苑は止まらない。 連撃のように叩き込まれる一撃一撃が、巨大な柱を正確に砕いていく。 砂塵の中で、彼女の表情は真剣そのもの―― 遊びであっても、勝負は勝負だ。 そして最後の一撃。 だるまは高く跳ね上がり、荒野の空へ放り出される。 紫苑はメイスを下ろし、満足げに息をついた。 「……成功。案外、気持ちいいかもね」 これは任務でも訓練でもない、ほんの気まぐれな挑戦。 だが荒野に刻まれたその一瞬は、 **“紫苑のだるま落としチャレンジ”**として、確かに始まりを告げたのだった。
