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蒼穹のフロンティア【静かな夜に灯る、ふたりの色】
戦争のない世界では、 警報音も、作戦会議も、発進命令も鳴らない。 あるのは、冬の静けさと、少し甘い空気だけだった。 赤を纏ったソフィアは、ツリーの灯りを整えながら微笑む。 金色の飾りが揺れるたび、彼女の表情はどこか柔らかくなる。 かつて戦場で見ていたのは炎の光だったが、 今はただ、穏やかな星の輝きだけがそこにあった。 一方、青のドレスを着たミリアは、床に並べたプレゼントを眺めている。 誰かのために包んだ箱。 それを開ける瞬間を想像するだけで、自然と頬が緩んだ。 「こういう時間、悪くないわね」 「ええ……とても」 短い会話の合間に、静かな笑顔が交わされる。 戦わなくていい世界では、 誰かを守るために笑う必要もない。 ただ“好きな時間”を、大切にできる。 ツリーの明かりがふたりを包み、 プレゼントのリボンがきらめく。 この夜が特別なのは、 何も起こらないことそのものが、奇跡だから。 平和な世界で迎える、 ふたりだけのクリスマス。
