鬼とは恐怖か、覚悟か/スマホ壁紙アーカイブ
【鬼とは恐怖か、覚悟か】 都が燃え落ちる音は、 すでに悲鳴とも祈りとも区別がつかなかった。 瓦が崩れ、塔が傾き、火の粉が夜空を覆っても、 彼女は一度も背後を振り返らない。 逃げる理由は、とうに失われていた。 人々はその姿を見て、鬼と呼ぶ。 角、赤く光る眼、血に染まった鎧。 だがそれは恐怖の化身ではない。 恐怖を飲み込み、なお剣を抜くと決めた者にだけ現れる、覚悟の形だ。 彼女の足元で炎がうねり、風が黒い衣を引き裂く。 それでも剣先は揺れず、呼吸は静かだった。 守るべきものはもう無い。 それでも立ち続ける理由だけは、確かにここにある。 炎は彼女を裁かない。 逃げた者も、叫んだ者も、すべて等しく焼き尽くす。 ただ一人、立ち尽くす彼女の姿を照らしながら── 誰が怪物で、誰が最後まで人であったのかを、冷酷なほど正確に映し出す。 そして剣が振り下ろされる瞬間、 都は完全に夜へと沈んだ。
