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【フルーツタルト】JCの事はJCに相談
「お待たせしました、初夏限定フルーツタルトになります」 店員さんが私と桃宮ちゃんの前にスイーツを提供しました。そう、私は限定スイーツをエサにしていたいけな女子中学生を呼び出したのです。 「おいしそーだね、おじさん!今日はありがとう!」 桃宮ちゃんはスイーツの写真を撮ったり口に運んだり忙しそう。私は桃宮ちゃんの様子を窺いつつ、話を切り出すタイミングを計ります。 「今月お小遣いがヤバそうでさー、これ食べられないかなって諦めかけてたんだよね。でもおじさんのおかげでこうして食べられて最高にハッピーだよ~。大人の男の人の経済力って頼りになるなぁ」 「味を占めないでね。一歩間違えたらパパ活って疑われるからね?」 まあ既に傍から見たらパパ活なのかも知れませんが。頼む、姪っ子を連れてきたように見えててくれ。 「・・・でさ、私に話があるんでしょ?何も無しにスイーツ奢らないよね」 「!」 桃宮ちゃんは口元に食べかすをつけたまま私に微笑みかけました。明るく社交的な面ばかりが目立っていたけど、意外と人の内心を見透かしてくるものです。いや、社交性が高いからこそ空気を読む力も備わっているのか。 「あ、あれ?違った?・・・単に私とデートしたかっただけだったりする?」 「い、いやいや。流石に中学生相手にそれはマズいって。ちゃんと話あるよ」 少しペースを乱されましたが、私は本題を切り出します。 「実は、橙臣ちゃんの事でさ。詳しい話は省くけど、この間彼女を抱きしめちゃって。それ以来何だか避けられてるみたいなんだ。怖がらせてしまったかなって心配で」 「あ~」 桃宮ちゃんは心当たりがあるのか、うんうんと頷いています。 「桃宮ちゃんにも『あいつは変態だから近寄らない方が良い』とか言ってきてたりするの?」 「やー、そんな事無いよ?・・・うーん、おじさんになら見せてもいいかな」 桃宮ちゃんはスマホを取り出して操作すると、私に画面を見せました。そこにはメッセージアプリでのやり取りが表示されています。 『ねえ弥美』 『何?』 『やばい』 『面白いものでも見つけた?』 『違う、早渚に急にハグされた』 『 (≧▽≦) 』 『面白がるな』 『キスは?』 『するわけない』 『告られた?』 『ない。てかもう面倒だから一から説明する』 『 📞 』 「で、恋織ちゃんが言うには、雨の日に一緒に捨て猫拾いに行ったら猫はもういなくて、そこで急に抱きしめられて褒められちゃったから照れくさくなって訳わかんなくなって逃げたって」 「うんまあ、大体あってるね」 「おじさん、溜まってた?」 「断じて違います」 路地裏でその猫が死んでたのを気付かれないようにしただけなんだけど、その説明は桃宮ちゃんにもできないよな。 「でも恋織ちゃん、おじさんの家でシャワー借りたらしいじゃん。お風呂上がりの良い匂いしたんじゃない?」 「すごい良い匂いしたね。うちのシャンプーとボディソープ使ってるはずなのに何であんなに違うんだろうね」 あ、やべ正直な感想が。桃宮ちゃんはにやーっと笑いました。 「やっぱり溜まってたんじゃーん。おじさんえっちだなー」 「ああ・・・もうそういう事でいいや」 さよなら私の名誉。 「まあでも、恋織ちゃんは恥ずかしがってるだけだから大丈夫だよ。おじさんの事嫌ってたりしないからセーフセーフ」 「そうかなぁ・・・」 「それで言ったらナマで恋織ちゃんのちっぱい見ちゃった同級生の鮫島君の方がよっぽど嫌われてると思うよ」 「そういやそんな事件あったね」 そうだな、鮫島君に比べればまだセーフか。 「おじさん、話が終わったならそろそろ帰ろう?」 「うん、そうだね。ありがとう桃宮ちゃん」 私は会計を済ませて、桃宮ちゃんと一緒にカフェの外に出ました。 「送っていくよ」 「ありがとー」 呼び出した手前、ちゃんと責任持って家まで送らないと。私は桃宮ちゃんと並んで歩き、とりとめのない話をしながら彼女を送っていきます。 「おじさん、もうここでいいよ」 桃宮ちゃんの家が見えたところで、彼女は私にそう告げました。と、周囲をきょろきょろ見回します。 「どうしたの?」 「うん、ちょっとねー。よし、大丈夫そうかな。おじさん、ちょっとかがんで?」 私は桃宮ちゃんに言われるがまま、目線の位置を下げていきます。 「何をするつもりなのかな?」 「次に恋織ちゃんに会った時、えっちな事考えられないようにしといてあげる」 何だそれ。疑問に思ったのも一瞬の事、桃宮ちゃんが私の頭に両腕を回してぎゅっとハグしてきました。顔全体が柔らかい感触に包まれます。 「!?」 「うん、これで良し。やっぱり匂いよりも感触の方が強く印象に残るでしょ?これで上書きできたから、次に恋織ちゃんに会ってもすけべな顔にならなくて済むと思うんだ♪」 少し照れたような表情で、桃宮ちゃんは私を解放しました。 「じゃあね、おじさん。今日はごちそうさまでした!」 大きく手を振って、桃宮ちゃんは自宅に駆けこんでいきました。私の頬には、まだ彼女の胸の感触が残っています。 「・・・これさぁ、橙臣ちゃんに会った時は良くても桃宮ちゃんに会ったらダメなパターンじゃん」 会うたび思い出すよこんなの。早いとこ別の何かで上書きし直さないと、中学生に会うたび鼻の下を伸ばすおっさんになってしまう。
