優雅の海上散歩/スマホ壁紙アーカイブ
【優雅の海上散歩】 あの人は、いつも海が好きだった。 「海の上なら、余計なことを全部忘れられるんだ」 そう言って、サングラス越しに夕陽を見つめていた。 それから数年。 今、私はひとりでこのヨットに乗っている。 風の匂い、波の音、沈む太陽── 全部が、あの人の記憶を運んでくる。 エンジンの音が微かに響く中、私はデッキに立ち、 誰もいない空間に、そっと声をかける。 「今日も、いい風だよ」 返事はない。けれど、波がやさしく船を押した。 それだけで、もう十分だった。
