シリーズ・ミニアリウム[2]/スマホ壁紙アーカイブ
※ミニアリウムとは、日常のモノの中に閉じ込められた小さな世界を指す造語です。 【木の壁に守られた港町】 僕らの町は世界でいちばん安全な港だ。 だって、どんな嵐もこの木の壁が防いでくれる。 朝は波の音で目を覚まし、昼は魚を捌き夜は灯台の光で眠る。 ときどき、天井が開く。 巨大な光と影が差し込んできて、潮風よりも少し紙の匂いが混ざる。 そのたびに漁師のマルコが言うんだ── 「外には、もっと広い海があるらしいぞ」って。 けれど僕らは、この小さな港を離れない。 ここには船も、魚も、友だちも、ぜんぶ揃っているから。 それでも夜の静けさの中で、 木の壁の向こうに広がる“外の海”を想像してしまうのは仕方ないよな。
