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【ボードゲーム】JCとツイスター
「おじさんも一緒にやろう!」 「勘弁して下さい」 ここは桃宮ちゃんの家のリビング。目の前には四色の丸がいくつも描かれた大きなシート。どうしてこうなったのか、ちょっと思い出してみます。 私が町を歩いていると、お菓子やジュースを買った帰りらしい桃宮ちゃんと遭遇。彼女はウキウキで「時間あったら遊ぼう?」と私を半ば強引に家に連れ込みました。そして通されたリビングには橙臣ちゃんがおり、床にはツイスターゲームの準備が整っていたというワケ。うむ、やっぱりよく分からない。 「いいかい桃宮ちゃん、30代のおじさんが女子中学生とツイスターゲームなんてやったら通報しかないわけだよ。橙臣ちゃんもそう思うよね?」 「全くよ。何で早渚連れてきたの。お菓子とジュースが足りないから買ってくるって言って出てったんだから余計な奴拾って来ないの」 どうやら先に二人で遊んでいて、途中に買い足しに出たところで私に遭遇したという状況だったようです。桃宮ちゃんの事だから、エロい展開とか全く頭に無くてシンプルに面白そうとしか思ってないな。 「うーん、恋織ちゃんちょっとおじさんの左に立って?」 「ん?」 橙臣ちゃんが私の左隣に立たされました。続いて桃宮ちゃんが私の右隣にやって来ます。 「うん、これで良し!女の子二人に挟まれたので、おじさんも裏返しにひっくり返って女の子扱いになりました!これで一緒にツイスター出来るね!」 「オセロじゃないんだから!そんな理屈で女の子にされたの生まれて初めてだよ!」 この子の頭の中どうなってんの。これが若さなのか? 「早渚、とりあえず弥美が飽きないと終わら無さそうだから、アンタはルーレット回して。私がシート行くから」 橙臣ちゃんが諦め気味に私にルーレットを手渡します。まあ、ルーレット回す方なら通報の心配はないか。 「じゃあ、何手目まで行けるかの手数が多い人が勝ちって事でやろうか」 「ちぇー、くんずほぐれつはダメかー」 桃宮ちゃんはちょっと不満そうだけど、私は逮捕されたくないので諦めてもらいます。手早くルーレットを回して橙臣ちゃんに指示を出していきますが、すぐに問題が。 「はい恋織ちゃん崩れたー。バランス感覚意外と悪いんだ?」 「う、うるさいわね」 橙臣ちゃん、運動神経は良さそうだけど関節が固いのか、それとも筋力が弱いのか割と簡単にダウンしてしまいます。しかもその度に、デニムスカートの中身がチラチラ見えてるものですから目の毒です。直接指摘するとビンタくらいはされそう。 「桃宮ちゃん、ショートパンツとかあったら橙臣ちゃんに貸してあげなよ。デニムスカートだから足の可動域が狭いんだよ」 私はそういう理由付けでフォローしました。が。 「おじさんのノンデリやろー!」 桃宮ちゃんがいきなりヒップアタックで私をどつきました。いったい何事か。 「私と恋織ちゃんじゃ、ウェストやヒップが結構違うんだよ!?恋織ちゃんが私のやつ穿いたらブカブカで、私がおデブみたいになるじゃん!」 言われてみて、二人の下半身を見比べると確かに肉付きはかなり違います。桃宮ちゃんの安産型ヒップに対し、橙臣ちゃんはきゅっと締まった小ぶりなお尻をしていてスマートです。これじゃ当てつけみたいになるか。 「早渚、視線がエロい!」 「やーん、おじさんのえっちー♪」 「理不尽!」 今の話の流れで見ない男いるわけないでしょ。ともかく、橙臣ちゃんの記録は伸びませんでした。次は私の番のようです。ルーレットを桃宮ちゃんに渡して、橙臣ちゃんと交代するべくシートに向かいます。次の瞬間。 『ウウゥ~ウ~!』 急に外からパトカーのサイレンが。私は思わず飛び上がり、咄嗟に橙臣ちゃんを庇うように抱きしめて息を潜めます。様子を窺っていましたが、どうやらここがお目当てでは無かったようです。多分外でスピード違反でもあったのでしょう。いやぁ、心臓止まるかと思った。 「わ~お、おじさん大胆~♡」 「あっ」 我に返って腕の中を見ると、怒りに震える橙臣ちゃん。マズい通報される。 「早渚・・・アンタ彼女持ちでありながら、よくもまあこういう事出来るわね・・・?」 「ち、違うんです。これは決して性的な目的の接触ではないです。ね、桃宮ちゃん!私やらしい顔してなかったでしょ!?」 私は桃宮ちゃんに援護を求めます。橙臣ちゃんの怒りオーラを察してか、桃宮ちゃんも早口でカバーしてくれました。 「うん、めっちゃパトカーにビビってるだけだったね。まぁほら、おじさんって前に私が恋織ちゃんの下着姿の写真渡した時も返そうとしてたくらいだし、恋織ちゃんの事そこまでえっちな目で見てないと思うよ?」 「あ」 言っちゃった。よりによって今。橙臣ちゃんの怒りゲージがマックスを超えたのがはっきり分かりました。 「弥美・・・早渚・・・それ、どういう事か聞かせてもらえる?」 「えっあっやっ恋織ちゃん今のは違くて」 桃宮ちゃんが焦ってる。橙臣ちゃんガチギレって事じゃん。何とかしないと私も死ぬ。 「も、桃宮ちゃん!ちょっと橙臣ちゃん押さえてて!」 「ら、ラジャー!」 体格で勝る桃宮ちゃんが橙臣ちゃんを捕まえ、その隙に私は持ち歩いていた目隠しを橙臣ちゃんに巻きつけました。 「ちょ、コラ!何すんのアンタたち!」 「お、おじさんどうするのこれ!」 「任せて!」 私は橙臣ちゃんをうつ伏せにシートの上に組み伏せ、上から覆いかぶさるようにフォールします。暴れる橙臣ちゃんの両手首をしっかり握って、耳元で囁きます。 「昨日も今日も閑古鳥、バーチャル古書店『染谷古書堂』店主の染谷紙魚彦です。オレンジレオンさん、こんそめやでございます」 私の体の下で、ビクッと動きを止める橙臣ちゃん。オレンジレオンというのは、橙臣ちゃんが染谷紙魚彦にコメントする際のネット上の名前です。以前玄葉とコメントを確認してて、『これ多分橙臣ちゃんだよね』という人を見つけておいたのが功を奏しました。 「や、やめっ、それダメ!染谷さんの声で囁くなぁ・・・!しかも目隠しされてるから余計にそれっぽいし!」 「いつも応援ありがとうございます。本日は小生、オレンジレオンさんに御礼申し上げたく参上いたしました。オレンジレオンさんのくださるコメントは、小生の拙い語りを仔細まで聞き逃さず楽しんでくれているのが伝わり、目にする度思わず口角が上がってしまうほど嬉しいのですよ」 「あっ・・・やぁ・・・」 しばらく橙臣ちゃんの耳元で感謝と親愛の言葉を連ねていると、暴れていた手足は大人しくなり、彼女の早鐘のような心音と荒い息遣いがはっきりしてきます。もういいかな、というところで目隠しをほどいて、私は立ち上がりました。 「オレンジレオンさん、今日の事は通報ナシでお願いしますね」 「はいぃ・・・♡」 恍惚の表情でだらしなく横たわる橙臣ちゃん。桃宮ちゃんは心配そうにその様子を見ています。 「おじさん・・・これ大丈夫?」 「ごめん桃宮ちゃん、後はよろしく。橙臣ちゃんが正気に戻ったら私殺されるかもだから」 私は素早く桃宮ちゃんの家を後にしました。通報はされませんでしたが、後日橙臣ちゃんが家に来て下着写真は回収していきました。まあこれは仕方ないですね。通報されなかっただけ幸運だったと捉えておきましょう。
