シリーズ・ミニアリウム[3]/スマホ壁紙アーカイブ
※ミニアリウムとは、日常のモノの中に閉じ込められた小さな世界を指す造語です。 【小さな街と巨大な水流の世界】 その街では、毎朝6時になると蛇口が空を割って現れる。 音もなく現れ、空中に固定されたまま、水を注ぎ始める。 人々はそれを“天の水供給”と呼んでいた。 水が止まるまでに街は目覚め、川を整え、船を出し、洗濯物を取り込む。 誰もその仕組みを知らない。ただ、毎日その恩恵で暮らしが成り立っていた。 ある日、少年が訊ねた。 「もし蛇口が止まらなかったら?」 老人は空を見上げて笑った。 「その時は…街が海になるだけさ」 そして翌朝、蛇口は止まらなかった。
