1 / 8
【モノクロ】知的怪人・新聞紳士!紙耐久も考え物!?
ヤバーイ出現の知らせを聞いて公園に駆け付けると、一見怪人には見えないけど物々しい気配を纏った人がいた。見た目はイケオジって感じの紳士で、英字新聞柄のスーツを着てる。多分、人に化けるタイプなんじゃないかな。 「あなた、ヤバーイの怪人でしょ!その邪悪な気配で丸わかりなんだから!」 私が叫んで指を突きつけると、その怪人はこっちを向いて口を開いた。 「その通り、ワタクシはヤバーイ四天王の一人バラバラヴァー様が造り上げた怪人にございます。名を『新聞紳士』と申しまして、新聞紙と紳士を合成した怪人ですな」 「しゃべりやがった!?」 ロジカルが驚いてスマホデバイスを取り落としかける。確かに、今までの怪人って基本的に鳴き声はあげてたけど意味のある言葉を操るのはいなかったのに。 「むぅ、今『紳士』を素材にしたような事を言っていたな。その人間の知能がかなり高かったのかも知れんぞ」 「人間を怪人にするのはハイヒールレスラーの時とかにもやってたけど、あの時は鳴き声しか喋ってなかったよね」 私たちが新聞紳士の特徴を見抜こうとしていると、するっと新聞紳士が増えた。最初から重なって立っていたのかっていうくらい自然に。 「増えちゃった!」 「ワタクシ、しん『ぶんしん』し、でございますから。分身も出来ますとも」 見る間に新聞紳士は増えて行って、私たちを取り囲んだ。私は包囲網を突破するために、ファイアボールを構える。 「おっと、お嬢さん。その炎の攻撃はワタクシに良く効きますが、攻撃しない事をお勧めしますよ」 「えっ、どうして?」 「見てお分かりかと思いますが、ワタクシのスーツは新聞紙。ゆえに簡単に破れたり燃えたりします。そうなると・・・もろ出しですぞ」 もろ出し・・・って、もしかして男の人のアレが!? 「ざけんな!ニチアサに出てきていい怪人じゃねーぞ!」 「そ、そうだよぉ!そんなえっちなの・・・だ、ダメだよ!」 「ふふふ、マジカヨといえど年頃の乙女。どうやらワタクシたちをもろ出しにするのは抵抗があるようですな」 私たちが攻撃できないでいると、じりじりと包囲網を狭めてくる。このままじゃ、一方的に攻撃を受けちゃう! 「なれば一撃で灰すら残さず屠るのみよ!カァッ!!!」 フィジカルが口から魔力砲を吐き出して、新聞紳士たちを跡形もなく消し飛ばした。でも、開いた包囲網を埋めるように次々と分身してくる。これじゃキリがないよ。 「お、おのれぇ・・・おのれぇ!」 「マズいぜ、こうなったら目を塞いで戦うか?」 「それじゃ敵がどれくらい残ってるか分かんなくなっちゃうよ!」 「苦戦しているようね」 打つ手がなくて困っていた私たちの隣に、クリティカルが降ってきた。 「クリティカル!来てくれたの?」 「ええ。とはいえ私も彼らを裸にしないで倒す方法なんて持ってないけどね。脱がしていいなら全員斬ってくるけど?」 「いやダメだろ!役に立たねぇな!」 やっぱりフィジカルがやってるみたいな超高火力攻撃で一瞬で消し去るしかないのかな。でも一人でも生き残ったら、そこからまたどんどん増えちゃうし。 「ヌゥ~ッ、火に弱いという事は分かっているのに燃やせぬとは。なんたるコシャク!」 火に弱い・・・そうだよね、そこは新聞紙の特徴受け継いでるんだ。新聞紙の弱点、他に何かあったかな・・・。 「・・・あっ!そうだ、これなら!」 私はすぐにタスカル君にテレパシーを飛ばした。 (タスカル君、今すぐ公園に来て!私が今から言う姿で!) (後でリリカルが一緒にお風呂入ってくれるなら考えてもいいカル) (もー!こんな時に何言ってるの!・・・お、お兄ちゃんの秘蔵の本読ませてあげるとかじゃダメ?) (う~ん、まぁいいカル。リリカルのお兄さん、確か巨乳セクシー美女派だったはずカル。結構期待できそうカル) 交渉成立。私は魔法のバリアを周囲に展開して、新聞紳士が近づけないようにした。時間を稼いでタスカル君が来れば、きっと勝てるはず! 「おいリリカル、何に気付いた?」 「タスカル君にお手伝いを頼んだんだよ。多分、すぐ来てくれるはず」 そして1分もしない内に、パワフルなエンジン音とタスカル君の声が聞こえて来た。新聞紳士たちがその声に動きを止める。 「毎度お騒がせ致しております、ちり紙交換車カル。ご家庭内の古新聞がございましたら 多少に関わらずお声かけ下さいカル。お声かけて頂ければこちらから参りますカル」 公園の遊歩道を走って来る軽トラックの姿が見えた。そう、私はタスカル君に「軽トラックに化けてセリフを言いながら走行してきて」とお願いしたの。 「ち、ちり紙交換車!なぜこんなところに!?」 「まずいですぞ、回収されてしまう!」 「逃げるのです、いや隠れるのです、いややっぱり逃げるのです!」 案の定、新聞の弱点そのままの新聞紳士は大騒ぎ。次々分身が消えて行く中、一人だけすごい速さで一目散に逃げて行く新聞紳士が。あれがきっと本体なんだ。 「私に任せて、仕留めてくるわ」 クリティカルが素早く飛び出した。木立の向こうに新聞紳士の姿が消えたかと思うと、次の瞬間すごい断末魔が響いた。 「リリカル、これで良かったカル?」 元の姿に戻ったタスカル君が歩いてくる。私はぎゅっとタスカル君をハグした。 「ありがとうタスカル君!」 「あ~、柔らかいカル~♪・・・でもちょっとボリュームが足りないカル」 なんか余計な一言が聞こえた。これでもロジカルよりあるもん! 「なぁ、あの新聞紳士って一体何がしたかったんだ?見たところ人も襲ってなかったしよ」 「ヌゥ、不気味だ。何か嫌な予感がするぞ」 「う~ん、考えてもしょうがないよ。次にバラバラヴァーが出て来た時にさりげなく聞いてみるとかしてみよ?」 でも二人が言うように、不気味な感じがする。今回の怪人は今までと違いが大きかった。言葉を喋ってこっちを牽制したりしてきたし、いつもならあるフィジカルやクリティカルへの対策もしてなかったように思う。もしかして、何かの実験を兼ねていたのかも。 「リリカル、早く帰ってお兄さん秘蔵のエロ本を見せて欲しいカル」 「・・・そうだね、帰ろうか」 私、『秘蔵の本』とは言ったけどエッチな本とは言って無いんだけどなぁ。後で「騙したカル!?」って怒られちゃうかも。
