極赤の世界にひとつの祈り/スマホ壁紙アーカイブ
【極赤の世界にひとつの祈り】 世界が赤に飲み込まれた日、山の上の小さな寺だけは、かすかに闇を抱いていた。 太陽は膨れ、空は燃え、谷の底まで真紅の風が満ちていた。 だが寺の縁側に立つひとりの僧は、慌てることなく静かに手を合わせていた。 祈りは、声にならない。 けれど確かに世界へと放たれ、赤い空に吸い込まれていく。 やがて、巨大な太陽の輪郭がわずかに揺れた。 まるで、その祈りに耳を傾けたかのように。 僧はゆっくりと目を開き、赤の向こうにかすかな影を見た。 それは新しい色の気配。 もう一度、世界が息を吹き返す前兆。 極赤の世界に響いたそのひとつの祈りは、 静かに、しかし確かに、終わりと始まりの境界を照らしていた。
