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【アイシャドウパレット】娘の悩み事
「う~ん・・・」 私が洗濯機を回し、トイレ掃除を終えてリビングに入ると娘の飛鳥ちゃんがうんうん唸っていた。テーブルの上には通販で届いたばかりのアイシャドウパレット。何か商品に不備でもあったのかしら。 「どうしたの、飛鳥ちゃん。何か困りごと?」 「お母さん。いやさぁ、どの色が一番似合うかなーって。日によって雰囲気変えるのはいいんだけど、やっぱベースは決めときたいじゃん」 私は正直、あまりメイクに詳しくない。元々派手に着飾る性格でもなかったし、高校卒業前に結婚決まったようなものだったから、専業主婦になって外出の機会も減った。そうすると気合の入ったメイクをするのは式典の時くらいしかないから。でも飛鳥ちゃんは、いつもバッチリメイクを決めてアクセサリーもいっぱいつけている。飛鳥ちゃんはいつでも欲しいものに全力だから、自分に似合うと思ったアクセサリーやコスメを遠慮しない。 「ふふ、気になる男の子ができたのね?」 メイクに悩んでいるなら、きっとそういう事だと思って私はそう言った。けど、飛鳥ちゃんはちょっと微妙な顔をする。 「ん~、気になる男の子って言うのはそうなんだけど、お母さんの思ってる意味じゃないと言うか・・・このアイシャドウ、その男子・・・はさみんに使おうと思って買ったんだよね」 「えっ?」 はさみん・・・って確か、中学校にあがってから出来た羽佐美サイバ君ってお友達ね。ウキウキで写真を見せてくれたけど、天使みたいに可愛い男の子だった。あの子、お化粧に興味あったんだ? 「サイバ君ってメイクの趣味があるの?えっと、オネエ男子みたいな子なの?」 「いやいやいや、はさみんはそういういかにもな感じじゃないよ。本人的には『頼りがいのある男らしい男』を目指してるって言うんだけど、いちいち振る舞いが可愛いんだよね。男子相手にお礼言う時とかさりげなく両手できゅっと相手の手を握ったりするし、くせ毛だからよく髪を指で整えてるんだけど、その仕草が色っぽいし。なんかもう、女子より女子なんだよ」 それはもう一種の才能ね・・・男女問わずモテてそう。 「修学旅行の時とか、一緒に風呂入ってる男子どうしてんだろ。絶対見ちゃうよあんなん。個人的には、はさみんのケツを思い出して抜いた男子が2割はいると見たね」 「飛鳥ちゃん、品がないよ」 でも、確かに女の子みたいに可愛い男の子が一緒のお風呂にいたら、同性と分かってても男の子は見ちゃうかも。私も夫と仲良くなったきっかけが混浴温泉だったから、どういう視線が飛んでくるのか想像ついちゃうな。 「というか飛鳥ちゃん、サイバ君が『男らしくなりたい』って思ってるなら、メイクされるのは嫌がるんじゃない?」 「まーね。でもさぁ、見たいじゃん?可愛くなったはさみんを想像するともう・・・ぐへへ」 飛鳥ちゃん、すごくお下品な顔をしてる・・・誰に似たのかしら、これ。私もお父さんもこんな風じゃないんだけど。 「お友達の嫌がる事はしちゃダメよ?」 「そこまでガチで嫌がってないから大丈夫だって。それに、こっちは色々見せてんだからたまにははさみんにも見せてもらわないとねぇ」 「色々って・・・?」 「えっちな自撮りとか」 えっちな自撮り!?それってやっていいものなのかしら!?で、でも今の若い子の間では、そういうアプローチが普通なのかしら?ジェネレーションギャップ感じちゃうなぁ。 「あ、あんまりサイバ君に迷惑がかかるような事はしないようにするのよ?」 「うーい♪」 私もたまには、若い子の流行とか調べておいた方がいいのかしら・・・オンラインゲームで知り合った高校生の男の子がいるし、今度会ってみようかなぁ。
