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シャーリーのインチキ物理学講座 ーー未知の力 磁石の真実ーー

賢者の学院・スカウト科講義室。 本来なら罠学や潜伏術、地形把握が飛び交うはずの教室に、今日は妙な沈黙が流れていた。 教壇の上に立つのは、赤いケープを肩に掛けた長身の黒髪女性―― スカウト科助教、シャーリー・クラウン。 彼女は、満面の笑みで小さなブリキの玩具の車を掲げていた。 「ふひひ……諸君。これこそが、この世の理を変える力―― 磁石ですぞ~」 カチ、と机の上に置かれた黒い石。 シャーリーがそれを車の前に近づけると、ブリキの車はコロコロと引き寄せられて動いた。 ……しばしの沈黙。 「はいはい、先生。インチキ上手いですね。流石スカウト科の先生」 「幸運神様の力で動くんですね。すごいですね~(棒)」 「先生、子供ですか。磁石が鉄をくっつけられるだけって、初等部の子でも知ってますよ」 冷ややかな視線が突き刺さる。 だがシャーリーは動じない。 むしろ楽しそうに、目を細めた。 「ふひひひ……良い反応ですな。 では、これを――うまく使えば、ですぞ?」 彼女は磁石を指先でくるりと回す。 「魔法も蒸気もいらない…… 自ら走る車が作れるかもしれませんな~」 教室が、ざわついた。 「……誰が磁石持って引っ張るんですか」 「意味わかりません」 「先生、話を盛りすぎです」 即座にツッコミが飛ぶ。 シャーリーは肩をすくめ、わざとらしく首を振る。 「ふひひ、その力をどう使うかは…… これから誰かが見つけるのではないですかな?」 一人の生徒が、ため息混じりに言った。 「先生、幸運神の巫女様なんだから、神様に聞けばすぐ分かるんじゃないですか」 「そうそう、未来とか理とか、全部」 棒読みの皮肉。 その瞬間、シャーリーの笑みが―― ほんの一瞬だけ、変わった。 誰も気づかないほど、微かな変化。 だが、空気が“張る”。 「……神は、答えをくれるものではありませんぞ」 静かな声。 「選択肢を置いていくだけです」 教室が、静まり返る。 「磁石も、魔法も、蒸気も…… 本質は同じ。見えない力が、世界を動かしている」 シャーリーは、再びいつもの調子に戻り、にやりと笑った。 「それをどう盗み、どう使い、どう隠すか―― それを考えるのが、スカウト科ですな。ふひひ」 玩具の車が、またコロコロと動く。 誰かが小さく呟いた。 「……なんか、今の話だけ、賢者っぽくなかったですか」 「気のせいだろ」 シャーリーはそれを聞きながら、内心で肩をすくめる。 (――やれやれ。 うっかり本気を混ぜるところでしたな) だが今はただの―― スカウト科の、胡散臭い助教でいい。 「さて、次は実習ですぞ~ 諸君、この磁石を使って、どうやって人を騙せるか考えてみましょう!」 「教育方針が最低だ!」 「でもスカウト科っぽい!」 そんな声を背に、 シャーリーは今日も、世界の理を一段階だけ、冗談に包んで置いていくのだった。

さかいきしお

コメント (15)

早渚 凪
2026年01月22日 15時02分
takeshi
2026年01月22日 14時13分
T.J.
2026年01月22日 13時57分
もぐっちー(mogucii)
2026年01月22日 12時50分
ippei

それってリニアモーターカーでは?と思いました

2026年01月22日 12時37分
Anera
2026年01月22日 12時13分
白雀(White sparrow)
2026年01月22日 12時02分
もみ
2026年01月22日 11時39分

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