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閃光のミラージュ 番外編 【だるまに託す願い)
畳の感触が、ゆっくりと心を落ち着かせていく。 障子越しの柔らかな光の中、劉妃は正座したまま、大きな赤いだるまを胸に抱いた。 掛け軸には「謹賀新年」。 門松と花が静かに新年を迎え、部屋の空気は穏やかで澄んでいる。 この場所では、銃声も追跡も存在しない。 あるのは、年の始まりにだけ許された、静かな余白。 劉妃はそっとだるまの丸い頬に指を添え、微笑んだ。 強い意志を宿すその表情は、不思議と彼女自身にも似ている。 倒れても、また起き上がる―― それが、このだるまに込められた願い。 「今年は……少し、穏やかでもいいかな」 小さく呟き、だるまを膝元に置く。 視線を上げれば、青い帯と銀の髪が揺れ、耳元の飾りがかすかに音を立てた。 笑顔の奥にあるのは、数え切れない選択と、進んできた道の記憶。 それでも、新しい年はまた始まる。 願いを預け、背負うものを軽くして。 劉妃は姿勢を正し、凛とした眼差しで前を見た。 このだるまが見守る限り―― 彼女は何度でも立ち上がり、自分の未来を選び続けるだろう。 赤いだるまは、何も語らず、ただ静かにそこに在った。 新しい年の始まりを、確かに祝福するように。
