三日月と観覧車/スマホ壁紙アーカイブ
【三日月と観覧車】 それは、星の国と地上をつなぐ唯一の乗り物だった。 夜ごと動き出す古びた観覧車。 誰もいないのに、ひとつ、またひとつ、ゴンドラが揺れる。 三日月は空の番人。 「次の旅人を迎える準備を」と、夜空の歯車を回す。 ある夜、迷子の少年がふとそこに立っていた。 「ここはどこ?」と尋ねると、観覧車がきぃ…と扉を開いた。 ゴンドラに乗ったその瞬間、世界は反転した。 風が星の言葉を運び、雲が地図に変わり、 月が微笑むと、観覧車は空へと昇っていった。 辿り着いたのは、夢しか通貨のない国。 願いを一つ、渡すたびに光の羽根が舞う。 少年は「帰りたくない」と言った。 けれど三日月は、そっと首を振った。 「帰る場所がある者だけが、ここに来られるのだよ」 地上に戻った観覧車は、もう動かない。 でも空には今日も三日月が浮かんでいる。 あの旅の秘密を、誰にも言わずに。
