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【針と糸】コスプレ衣装を作るサイバ君
「あらサイバ、何を縫っているの?」 「あ、お母さん。えへへ、美結ちゃんに頼まれてね。コスプレ衣装を作ってるんだ」 僕がリビングで針仕事をしているとお母さんがやってきて、そう聞いてきた。元々はお母さんのお手伝いで始めた裁縫だけど、今はお母さんは手先の感覚が鈍くなって目も悪くなったので僕の方が裁縫が上手い。 「僕と美結ちゃん、身長や3サイズほとんど同じだからね。作った服の着心地確認が簡単で助かるよ」 「そう・・・」 お母さんは僕の様子に安心感を覚えているみたいだ。小学生低学年時代の僕は『父親がいない』事で同級生(主に男子)からたくさんいじめられていたから、いじめがなくなった今の状況を喜んでくれている。その頃の事が原因で男子の友達が少ない僕だけど、お母さんは無理に男友達を作れとは言わない。きっとまだ引け目を感じているんだと思う。 「美結ちゃんが僕にお願いをしてくるなんて珍しいから、ちょっと張り切っちゃった」 優しく微笑みながら手を合わせて「お裁縫の得意な羽佐美君にお願いしたいな」って言って来た美結ちゃんの顔を思い出す。一番の友達のお願いだもん、頑張って応えなきゃ。 「・・・でもサイバ、その服ってかなり布地が少なそうね?」 「うーん、僕は良く知らないんだけど僕が7歳くらいの時にやってた魔法少女アニメの服なんだって」 「美結ちゃんって意外と大胆な格好するのねぇ」 そう言われると、確かにそうかも?僕はよく一緒にお風呂に入った事もあって、美結ちゃんの裸を見慣れてるからあんまり美結ちゃんの私服の露出度って気にした事無かったかも。 「サイバ、いい?サイバと美結ちゃんは昔からすごく仲良しだから大丈夫だと思うけど、間違っても美結ちゃんを泣かせるような真似をしてはダメよ。男の子なんだから、自分の行動や言動にちゃんと責任を持って女の子と接しなさいね」 「うん、大丈夫。お父さんみたいにはならないから」 僕はいつもの返しをする。お母さんは未だにお父さんを許していない。お父さんのご両親・・・僕にとって父方のおじいちゃんとおばあちゃんがせめてもの償いにと、生活支援のために送ってくれているお金も、そのほとんどを貯金して手を付けていない。そして死んでしまっているからお父さんはもう二度と、お母さんに頭を下げる事も謝罪の言葉を言う事もできない。だからもしかすると、お母さんはもう一生お父さんを許す機会がないままなのかもしれない。 「サイバ、お母さん少しお昼寝したらまたパートに行ってくるから・・・」 「うん、ありがとう。お夕飯、温め直せば食べられるカレーを作っておくね」 僕も早く働ける年齢になりたい。そうすれば少しでもお母さんを助けてあげられるから。そのためにも今は、お裁縫もお料理ももっと上手くなって、蛍さんと一緒に体も鍛えて備えるんだ。
