【そり】ミリシラ様の異世界百景その30「メレンゲレンデスキー場」

地球の皆の者、こんクエスト～！全知全能の大賢者「ミリシラ・シッタカブール」じゃぞ！ 今日はここ、「メレンゲレンデスキー場」からお届けじゃ！見ての通り、一面真っ白でふわふわな雪に覆われたなだらかな雪山なんじゃよ。 ここは概ね二種類の利用目的に使われておる。一つは滑るためのレジャー施設。スキーやスノーボードやソリを使って、傾斜の上から下まで滑れるんじゃ。初心者向けの短いコースから、上級者向けのロングコース、そして立ち入りに際して『自己責任』である事を証明する書類にサインせんと入れん超上級者向けのハードコースがある。 ロングコースはたくさんのカーブやジャンプ台があって、一番人気が有るコース。ほとんどの者はそっちで遊ぶのぅ。ワシがいるのは初心者向けコースで、シンプルな傾斜だけ。スタートからゴールが目視できる程度なので、小さな子供連れでも安心して遊べるところじゃ。ロングコースやハードコースから実況すると周りの迷惑になるから、広くて安全なここからお届けしとるという訳じゃ。スキーやスノーボードができないからここでソリ遊びしとる訳ではないので、勘違いせんように。 ハードコースに関しては、崖やクレバス、尖った岩やアイスバーン、傾斜角40°はある氷の洞窟に高低差200mクラスの大ジャンプ台もあるという、まさに『命知らず野郎限定』と言っていいコースじゃな。事故った時用の備えを各自しておかんと、真面目に死人が出る可能性があるため念書を書かされる訳じゃよ。いざとなったら空を飛べる魔法使いが挑戦する事が多いが、たまに魔法も脱出アイテムも無しに挑む豪傑もおる。まぁそういう奴らは大体崖から転落した程度では無傷ってレベルの使い手じゃけどな。ちなみにワシはハードコースをクリアした経験もあるが、あれ危険度が高すぎて逆に楽しめんわい。スリル大好き人間じゃないと面白くないじゃろな。 で、各コースの終端にはコースのスタート地点やセンターハウスに戻れる転移魔法陣が用意されておる。これで思うさま滑っては戻りを繰り返して遊ぶんじゃよ。一年通して魔法で気候が調整されておるから、いつだってウィンタースポーツを楽しめる人気レジャー施設として成功を収めておる。 もう一つの目的についても話そうか。それは冒険者の寒冷地訓練施設としての側面じゃな。よし、ちょっとそれ用のコースに移動しよう。 おっ、新米冒険者っぽい二人組がおるのぅ。人間族の男と犬獣人の女じゃな。女の方が軽装じゃから、あれはワシ同様に防寒魔法を使える魔法使いかの。 「わう～～～～～っ！たのし～～～～～い！」 「コラー、待てワンコー！お前そのソリは乗って滑って遊ぶ用じゃねーって！荷物運搬依頼のトレーニング用に持ってきたんだっつの！てか俺にも防寒魔法かけろよ！クソ寒いんだよー！」 「魔力消費がおっきいからやだ～！」 「うそーん!!」 ・・・リア充め。ちょっとザラキーマやマヒャデドスあたりぶちかますかのぅ・・・。あ、いやいやいかんいかん。ちょっと頭を冷やすか。 さて、あの男が叫んでいたように寒冷地での運搬依頼を冒険者が請け負う事もある。主に魔物の生息域である寒冷地にある鉱脈からの鉱石採掘～持ち帰りってパターンじゃな。そういう時は、空が吹雪いていると空路がとれないためにソリに鉱石を積んで帰る事になる。中々の重労働じゃから、難易度は高いがその分報酬も高額になりやすく、魔物との戦いに自信がない駆け出し冒険者が請ける事もままあるんじゃ。あの二人は多分それを見越してここに練習に来たんじゃろな。 ちなみに寒冷地運搬で最も難易度が高いのは、以前紹介したイヴェール大氷河での運搬じゃな。普通の寒冷地と比較にならんくらい寒いからのぅ、あそこは。ただ歩いてるだけで命を落としかねんような地域じゃし、こういうところで練習したりたくさん依頼をこなして慣れている者でないとまず達成できん。 「わう～～～～～っ！」 「遊ぶなー！」 ・・・ああいう不真面目そうな奴らに限って、なぜか不思議と生き残るがのぅ。あーあ、あの娘、今にも下着が見えそうじゃわい。・・・ハッ！？ おいお主ら、さっきワシがソリ遊びしてた時じゃが。まさかとは思うがワシのおぱんつ見とらんじゃろうな？正直に言え、名乗り出た奴は特別に許してやることを検討してやらんでもないぞ。言い出さんかった者には『トイレットペーパーをお尻に当てた瞬間、ペーパーが「唐辛子織り込み粗目紙やすり」に変化する呪い』を掛けてやるから覚悟しておけ。尻の穴から火が出るような痛みを味わわせてやるわい。 という事で、今回はここまで。見てくれてありがとうなのじゃ、おつカブール～！ さぁて何人が名乗り出るかのぅ・・・。ワシはみんなを信じておるぞ。