【シュトーレン】朝カフェでシュトーレンを

「・・・ねぇキョーコさん、これデカくね？」 昨夜もアイカさんと『遊んだ』私は、その締めに二人でカフェに入って朝ご飯を食べ・・・るつもりだったはずなんだけど、12月って事もあってメニューに『期間限定シュトーレンセット』があったのでつい頼んでしまった。 「うん、ちょっと大きかったですね・・・」 「前さ、キョーコさんとは別の人とアフター締めにここじゃないカフェに行った時にね。その人もシ〇ノワール頼んでたけど、これ絶対それよりヤバイでしょ。あれと違ってみっちりしてんだもん」 シュトーレンって確かに「ふわふわ柔らか♪」ってイメージはない。二人で分けて食べてもお腹いっぱいになっちゃいそう。 「あとさ、シュトーレンって聞くと『酒盗』食いたくなんない？」 「それはアイカさんだけだと思います。昨夜もいっぱい飲んだし酒盗もつまんだでしょ？高血圧になっちゃいますよ」 アイカさんの生活習慣、絶対健康には良くないと思うんだけどなぁ。・・・私の頼んだこのシュトーレン、それに追い打ちかけてるかも。 「アイカさん、これから帰って寝るんですよね？カロリー的に無理そうなら控えめにしていいですよ」 「いや、キョーコさんのほっそい体で食べきるの無理くね？いーよ、アタシも半分食べるし。最近、誰かさんのせいで夜の『運動』がお盛んだからさぁ、キシシ♡」 「に、二週間に一回じゃないですか！私がいやらしいみたいな言い方しないで下さい！」 アイカさんと私は恋人同士とかじゃない。私は“客”だから、アイカさんと遊ぶにもお金が要る。もっと会いたいけど、そんな事してたら貯金が尽きる。 「アタシ、キョーコさんのせいだともアレの事だとも言ってないけどー。な～に想像したのかな～、お・ねー・さ・ん？」 耳が熱くなるのが分かった。引っかかっちゃった。やっぱり普段の私じゃペースを握れないみたい。スイッチが入ってる時はアイカさんをたじたじに出来るんだけどなぁ・・・いつでもスイッチ入ってたらいいのに。 「てか、キョーコさんはふつーにいやらしいから。最初会った時あんなにイヤイヤ言ってたのにドハマりしてんじゃん、ウケる。しかもアレの時やってくる技マジでエグいからね？いやらしくない人間はさぁ、『胸に吸い付いて乳首の先っぽを舌先でほじりつつ乳首の根元を甘噛み＆歯ぎしり攻撃』なんてしないんだわ」 ・・・やっぱりスイッチが入ってるのも考え物かも。私アレの時ホント何してんの。恥ずかしすぎる。でもアイカさんを思い切り鳴かせたい自分がいるのも事実で。 「心がふたつある～」 「バケモンになんの？」 そんな他愛もない話をしながら、コーヒーを飲んではシュトーレンを頬張る。がんばって食べる内に、だんだん少なくなってきた。これなら何とかいけそう。 「・・・ね、キョーコさん」 「はい？」 おもむろに、アイカさんが私の頬に手を添える。そして私の顔を振り向かせて、目と目が合った。 「ちょっと動かないでね」 つつ、とアイカさんの指が頬をなぞる。思わずぎゅっと目を瞑った私だったけど、何も起きなかった。恐る恐る目を開ける。 「顔にシュトーレンの欠片ついてたわ♪」 私の頬からすくい取ったシュトーレンの欠片を、アイカさんはぱくっと口に運んだ。そういう仕草、ずるいと思う。 「やっぱキョーコさんってほっとけないわー。会社でもマスコット扱いされてそう」 「うぅ」 その方がマシかもしれない。私会社じゃ地味だから、多分『ただの間抜け』って思われてる。恨めし気にアイカさんを見ると、その口元にシュトーレンの粉砂糖がついてるのに気付いた。 「アイカさんもついてますよ」 私はお返しとばかりに、アイカさんの顎に手を添えて固定し、ぺろっと粉砂糖を舐め取った。砂糖の甘さと、かすかにアイカさんのリップの味がする。 「・・・っ、きょ、キョーコさんってさぁ・・・！なんで臆面もなくそういう事できんの？急にスイッチ入れんのマジでやめて、心臓破裂するから」 あ、アイカさんが真っ赤になってる。こんな顔アレの時以外で見るの初めてかも。ちょっと嬉しくなる。 「ぽやっとしたカモそのものみたいな顔しといて、近寄ってったら逆に食べちゃうとか・・・もうキョーコじゃないよ、アンコウだよ。なんかアホ毛もそれっぽいし。ほんと、タチ悪いタチ過ぎんでしょ・・・」 アンコウ・・・それは初めて言われた。そう言えば小学生の時、誰もキョーコって読めなくて初めての人はアンコ呼びとかアンズ呼びだったなぁ・・・。 ※この二人はお題【招き猫】の時の二人です。 【招き猫】招きネキにして招きネコ https://www.aipictors.com/posts/681972