幸運神の跳躍(フィールド・パルクール)

賢者の学院の演習場に、シャーリーの甲高い笑い声が響き渡った。 「ふ〜ひひひひ! 諸君、注目! 我らスカウトにとって一番大事な事!! それは身のこなしです!! 運命のダイスが転がる前に、自らその先へ跳ぶ勇気と技術! それこそが幸運を掴む最短距離ですぞ!!」 教壇代わりの高台で、シャーリーは演劇用の大鎌を豪快に振り回し、集まった学生たちを煽る。 その傍らで、呪術学科助教のリリスが、心底場違いだという顔で腕を組んでいた。 「……目立たない事じゃね〜のか? 隠密の基本を無視して何を教えてんだよ、アンタは」 リリスの冷ややかなツッコミを、シャーリーは「おやおや」と華麗にスルーした。 「リリス助教、見てなさい! これが『魅せる』幸運ですぞ!!」 【シャーリーの模範演技:運命の先制攻撃】 シャーリーが跳んだ。 赤いマントを翼のように広げ、彼女は垂直な壁を重力など存在しないかのように駆け上がる。 紫色の魔力を帯びた刀を抜き放ち、空中に魔法陣を刻みながら、月(を模した魔導照明)を背に大きく舞う。 「ふ〜ひひ! さあ、次はリリス助教! 闇に生きる者の真髄、絶望すら置き去りにする足さばきを見せてやりなさい!」 着地と同時に、シャーリーは芝居がかった仕草でリリスにバトンを渡した。 【リリスの模範演技:無音の処刑】 「……ちっ、ハードル上げやがって。 いいか、本当の『身のこなし』ってのはこうやるんだ」 リリスが動いた瞬間、空気が凍りついた。 シャーリーのような派手な光も、マントの翻る音もない。モノトーンのメイド服が影に溶けるような、極限まで無駄を削ぎ落としたアクション。 二本の短剣を逆手に保持したまま、彼女は柵の上を滑走し、一瞬の滞空でバク転を繰り出す。 その動きは速すぎて、学生たちの目には「影」が跳ねているようにしか見えない。 着地の瞬間、彼女はすでに次の獲物を狙う暗殺者のポーズで静止していた。 「……こんなもんでいいか?」 リリスが静かに立ち上がると、演習場は嵐のような拍手ではなく、あまりの凄みにしんと静まり返った。 【事後のやり取り】 「ふ〜ひひひ! さすがはリリス助教! 『目立たない』どころか、学生全員の心を完璧に暗殺してしまいましたな!!」 シャーリーがニヤニヤしながら歩み寄ると、リリスは乱れた髪を直しながら忌々しげに睨み返した。 「うるさい。結局私が一番目立ってるじゃねーか。……あとで、この『特別手当』はきっちり請求させてもらうからな」 「おおっ、恐ろしい!!高くつきそうですな」 剽げた仕草で身をすくめるシャーリーに、リリスも苦笑を浮かべながら、短剣を流れるような動作で鞘に収めた。

さかいきしお

コメント (7)

ガボドゲ
2025年12月17日 12時32分
Ken@Novel_ai
2025年12月17日 12時04分
もみ
2025年12月17日 11時37分
もぐっちー(mogucii)
2025年12月17日 11時19分
翡翠よろず
2025年12月17日 10時55分
しぃろ@リィルゥ&桃音&れもん
2025年12月17日 10時15分
えどちん
2025年12月17日 10時13分

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