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蒼穹のフロンティア【盤上の宇宙、彼女の一手】
テンペストのブリーフィングルーム。 薄暗い室内に、青白い光の3D地図が静かに浮かび上がる。 艦隊の航路、敵影の予測、補給線の強度―― 無数の情報が、球体の地図の上を走っていた。 その前に立つのは、セリス・ハワード。 顎に指を添え、視線は一切揺らがない。 「……ここで分断を誘う。 主力は囮、第二梯団はこの宙域へ」 彼女が指先で触れるたび、 光の航路が再編され、戦場の未来が書き換えられていく。 感情を挟まない冷静さ。 だがその奥には、仲間を一人も失わないための 緻密すぎるほどの計算があった。 背後ではオペレーターたちが息を潜め、 彼女の一言一言を待っている。 ――副長として、 そしてテンペストの“頭脳”として。 セリスは、戦争を「勝つ」ためではなく、 「生き残る道」を描いていた。 3D地図に映る無数の光点は、 彼女の思考そのもの。 静かなブリーフィングルームで、 今日もまた、 テンペストの未来が彼女の指先から生まれていく。
