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閃光のミラージュ 番外編【朝の光と、湯気の向こう……】
朝のやわらかな光が、窓辺から静かに差し込む。 カーテン越しの陽射しは、まだ少し冷たい空気を溶かしながら、部屋を優しく満たしていた。 テーブルを挟んで向かい合うのは、劉妃とエリック。 二人の手には、同じ雪だるま柄のマグカップ。 白い陶器から立ちのぼる湯気が、穏やかな時間をゆっくりと刻んでいく。 「今日は、少し苦めだな」 エリックがそう言って微笑むと、劉妃は小さく頷きながら、カップに口をつける。 戦いも、使命もない朝。 聞こえるのは、時計の針の音と、窓の外で揺れる木々の気配だけ。 視線がふと重なり、それだけで言葉はいらなくなる。 同じマグカップ、同じ時間、同じ温度。 ――こんな朝が、何度も続けばいい。 劉妃は心の中でそう願いながら、もう一口、コーヒーを飲んだ。 その苦味は、不思議とやさしく、二人の距離をさらに近づける味がした。 これは、英雄でも戦士でもない劉妃の物語。 恋人と迎える、何気なくて、かけがえのない朝の一場面。
