美食の妖精

「おい、暴食巫女、ご指名だぞ」 「えっ、あたし？」 魔物食い、暴食巫女の二つ名をもつチェルキー、 冒険者にして、美食の女神デリシアの神官戦士である彼女には、特殊な依頼が来ることがある。 「菓子を作ってくれってよ」 菓子というのは、本来は庶民の食事とは違い、特別な儀式、神事などの供え物の側面もある。 だが、あえて冒険者の神官に頼むというのも・・・・・。 「変な話だね‥‥‥」 「どうも、よその神様の関わりらしいからよ。あんまりぶっとい紐がついているのは嫌なんだとよ」 「フン！！、デリシア様は確かに小さな神様だけどね。あんまり馬鹿にすると、ぷーにゃん代わりに送り込むよ」 マイナーな神の使徒ほうが良いと言われた暴食巫女は面白くなさそうに、ゲテモノ料理が得意な相棒の名前をだして、鼻を鳴らした。 「こんなもんかしらね」 チェルキーは、東方風の厨房で、菓子の盛り付けをしている。 繊細な彩の小さな菓子は、普段彼女が作る豪快な料理とは異なり、可愛らしく美しい。 彼女が纏う東方風のローブ状のキモノも、彼女の小柄ながらも筋肉質な体を隠し、普段の強力な神官戦士の面影を感じさせない。 小柄で可憐な食の妖精といった風情だ。 「美食に国境はないというからね。喜んでくれたらうれしいよ」 暴食巫女は、満足げに微笑みながら配膳を始めた。