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コルセット・ブレイク作戦顛末記
「ふっふっふ……少佐、見てください!この**『心意気の極致』**を!」 轟少尉は、カフェのカウンター席で、愛用のコルセット型アーマーを装着したまま、巨大なパフェを平らげた。 リゼット少佐は、頭に乗せた黒猫を撫でつけながら、冷徹な視線を向けた。 「轟少尉。貴官はまたその非合理な準備をする。作戦開始前に腹部に自滅リスクを抱え込むとは、プロの軍人としての自覚に欠ける行為だ。防御具の性能を、自らの食欲で相殺するのは言語道断」 「何を仰いますか、少佐!この燃料が、勝利を呼ぶのでございます!」 「貴官の『燃料』は常に**『混乱』**しか呼んでいない。すぐに現場へ急行せよ」 少佐の厳命を受け、轟少尉は真顔で立ち上がった。 そして、作戦地。敵工作員が少佐を拉致しようと動いた瞬間。 轟少尉は、警備ビルディングの屋上から、ボタンを止めないコートを翻し、コルセットアーマー姿で敵のど真ん中へ飛び降りた。 「ふははは!リゼット少佐の拉致など、この『天空の騎士(自称)』が許しませんぞ!!」 ――ドムッ!! 着地の衝撃は、パフェで膨れた腹部と、衝撃吸収性の低いコルセットに集中した。 「ぐッッ!…グェホッ!」 轟少尉の顔は、瞬時に濃い紫色に変色し、そのまま崩れ落ちる。サングラスは弾け飛んだ。 敵工作員たちは、嘲りの声を上げた。 敵リーダー:「自滅したぞ!その鎧は、貴様の**『自意識過剰』**のせいでただの重石だ!鈍器で叩き潰せ!」 工作員たちはモップやデッキブラシを手に取り、轟少尉を叩き始めた。 「くっ……一対多数とは……卑怯でございます……!」 その時、通信が入った。リゼット少佐からの冷徹な叱責だ。 「轟少尉!いつまで無様な姿を晒す! その装備は貴官の**『実力』を殺している。即刻、排除せよ!このままでは、貴官を作戦続行不能**と判断する。厳重注意を覚悟しろ!」 上官の厳命に、轟少尉の軍人としてのプライドが燃え上がった。 「はっ!少佐!しかし、私は**『真の戦闘服』**を展開いたします!」 「コルセット・ブレイク!!」 轟少尉は、最後の力を振り絞ってコルセットのクイックリリースを引きちぎった。 バリバリッ! 鋼鉄とケブラーの鎧が砕け散り、その下から濃紺のハイレグブルマと「轟」ゼッケン付きの体操着が露わになった。顔色は健康的で、瞳に鋭い光が宿る。 「これが、私の**『心意気の極致』**でございます!!」 動きの制限を失った轟少尉は、武道家としてのキレを取り戻し、怒涛の反撃を開始。モップを振るう工作員たちを瞬く間に蹴り倒し、作戦は成功に終わった。 数分後、路地には伸された工作員たちと、轟少尉が静かに座っていた。彼女はブルマ体操着姿で「MAX Coffee」を傾けている。 リゼット少佐が、頭に黒猫を乗せたまま、厳しく歩み寄ってきた。 「轟少尉。戦闘は評価するが、その格好は規律違反だ。着地失敗は作戦の遅延を招いた。プロとしての基礎訓練の欠如だ。帰還後、この件については報告書を提出せよ」 少佐の厳しい言葉に、轟少尉は姿勢を正し、力強く言い返した。 「はっ!少佐!しかし、私は**『心意気』で勝利を掴み、『装備の誤り』**を修正いたしました!これが、私の勝利のスタイルでございます!」 「貴官の『スタイル』は、常に周囲を混乱させる**『カオス』**でしかない。全く……」 少佐はため息をつき、頭の上の黒猫にそっと触れた。その言葉には、厳しさと、上官としての諦観が滲んでいた。
