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晩餐会の刹那 誘う翠玉の輝き

リゼット少佐の実家で行われる、政治的な晩餐会、その直前。 リゼット少佐の毅然とした声が響く。 「少尉、貴官も護衛の任務として、この晩餐会に出席したらどうだ」 轟少尉は、眉を下げて不満そうに答える。 「いやですよ。ドレス着てたら、美味しい料理も思う存分食べられないじゃないですか」 「命令だ」 少佐の有無を言わせぬ一言に、轟少尉は背筋を伸ばし、敬礼した。 「了承しました!令嬢の心持ちで優雅にかつ適切な護衛を務めさせていただきます!」 そして今。華やかな晩餐会の会場へと、二人は足を踏み入れた。シャンデリアの光が煌めき、上流階級の人々がグラスを傾け、優雅な談笑が会場を満たしている。 艶やかな青いドレスに身を包んだリゼット少佐と、真紅のドレスが夜の宴に映える轟少尉は、会場の注目を一瞬で集めた。 「少尉、貴官も立派な令嬢に見えるが。貴官の出自は聞き及んでいたが、なぜそれが普段できないのか?」 リゼット少佐が、低い声で問いかけた。 その表情には、ほんのわずかだが、緊張感と心理的疲労が浮き出ていた。 「少佐、心意気がすべてに優先するのです!いまは、令嬢の心意気になっているだけです!!」 轟少尉は、胸を張りながらも、視線は会場を冷静に観察していた。 その瞬間、轟少尉の「心意気センサー」が微かな異変を捉えた。彼女の視線が、ふと一人の男に向けられる。 彼は、リゼット少佐に近づこうとするのを諦めたかのように、不自然に空虚になった椅子のそばに立っていた。 その左手薬指には、先ほどまで確かに輝いていたはずの、緑色の大きな宝石の指輪がない。 (宝石が消えた……! 仕込んだ! 何かの誘い!) 轟少尉の違和感は一瞬で確信へと変わった。脳内で警告音が鳴り響く。外部の何者かに指示を出した? 次の瞬間、彼女の視線は床に吸い寄せられた。男の足元、倒れた椅子の陰に、目立たないよう転がる緑色の指輪を発見した。 「少佐!」 轟少尉は即座に行動に移した。真紅のドレスの裾が舞い上がるのも構わず、彼女は一瞬で腰を落とし、素早く拾い上げる。 その動きは優雅な令嬢のそれではなく、完全に訓練された軍人の反射速度だった。 同時に、会場の窓の外、夜空に微かな金属音が近づくのを捉えた。晩餐会の出席者、おそらくリゼット少佐を標的とするドローンだ。 「少佐、伏せて!」 轟少尉はリゼット少佐を背中でかばうように身体を寄せ、同時に、指輪を掴んだ腕を窓に向かって勢いよく振り抜いた。 心意気の全てを込めた投擲。小さな緑の指輪は、夜空の闇を切り裂く軌跡を描き、外から突入しようと急接近してきたドローンへと正確に飛翔した。 次の刹那、「ドンッ」という衝撃音と共に、窓の外で閃光と爆発が起こった。ドローンのセンサーが指輪を捕らえたのだ。 二人の女性軍人は、優雅さを保ちつつも身構えて、その爆発を冷静に見つめた。 リゼット少佐の鋭い瞳は爆発の光を捉え、口元は固く閉じられ、即座の反撃や次の対処に備える軍人としての厳しさを露わにしている。 轟少尉もまた、任務遂行の達成感とともに、警戒心に満ちた厳しい表情で、爆発の余波を耐え忍んでいた。 危機は去った。しかし、この晩餐会の夜は、まだ終わらない。二人の間の緊迫した空気が、そう告げていた。

さかいきしお

コメント (30)

クマ×娘 D.W
2025年11月28日 14時04分
thi
2025年11月25日 13時42分
999fun
2025年11月25日 12時21分
ガボドゲ
2025年11月25日 10時41分
gepaltz13
2025年11月25日 05時48分
たこさん(最近動画が多い)
2025年11月24日 23時06分
凪月 (NATSUKI)
2025年11月24日 18時17分
ひろひろ
2025年11月24日 15時24分

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