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吹雪舞う雪原の祝砲(予行演習)

冬の青空の下、一面の雪原と化した基地の訓練場に、不釣り合いなほど派手なジープが停車していた。荷台には、見るからに物騒な無反動砲が積まれている。その砲口から、今まさに「祝砲」が放たれた瞬間だった。 「ひゃっほう! 大成功です、若菜少尉! これで大晦日はバッチリですね!」 一番背の高いブロント少尉が、ジープの荷台に片足をかけ、金髪のポニーテールを躍らせながら歓声を上げる。寒さなど微塵も感じさせない生足とミニプリーツスカートが、彼女の快活さを際立たせていた。砲口からは火炎ではなく、金色の光を伴って色とりどりの紙吹雪が勢いよく噴き出し、雪原に降り注ぐ。 ブロント少尉の隣、ジープの助手席側では、若菜少尉が茶髪のソバージュヘアを揺らし、一部編み込まれた髪を気にしながらも、驚きと呆れの混じった笑顔で手を振っていた。 「少尉、派手すぎますって! これじゃ本番で神社が埋もれちゃいますよ!」 ジープの運転席側に立つリゼット少佐は、紫がかったストレートの黒髪を風になびかせながら、スマートグラス越しに冷静な視線を送る。 「……散弾効果は良好。しかし、風速計算を誤ると広範囲にゴミを撒き散らす危険性があります。要再検討」 その声はいつも通りクールで、彼女の表情は微動だにしない。 一方、そのリゼット少佐の隣で、小太りで眼鏡の福井候補生は、紙吹雪の入った予備の箱を抱えながら、恍惚とした表情を浮かべていた。 「この爆音、この色彩! 無駄なロマンの塊、最高であります!」 そして、ひときわ小柄な富士見軍曹は、耳当てをつけた黒髪ボブの頭を少し傾け、手元の計測器を見つめている。 「飛距離250メートル、紙吹雪滞空時間15秒。周辺の小動物への影響、軽微」 淡々とした報告が、この場に漂う熱気をわずかに冷ます。 空に舞い上がった紙吹雪は、やがて雪に混じり、訓練場の一角をささやかなお祭り会場に変えていく。これでは予行演習どころか、さながら本番のようだ。 「よし! この勢いで次はTOWミサイルランチャーに、もっと巨大なくす玉を装着してみましょう!」 ブロント少尉の次の暴走計画に、若菜少尉は思わず天を仰いだ。 「ええっ!? またですかぁーっ!?」 雪原に響き渡る若菜少尉の悲鳴と、ブロント少尉の屈託のない笑い声。分室の年末年始は、今年も賑やかになりそうだ。

さかいきしお

コメント (9)

kacky333
2025年12月28日 07時10分
しるばん
2025年12月28日 06時34分
Anera
2025年12月28日 06時20分
みやび
2025年12月28日 06時11分
Ken@Novel_ai
2025年12月28日 06時04分
なおたそ
2025年12月28日 05時27分
もみ
2025年12月28日 05時01分
サントリナ
2025年12月28日 04時49分

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