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タピオカより甘く、太陽より熱く

アイピク島の夕暮れ。 タピオカのグラスを手に、プーにゃんはご機嫌にくま耳を揺らしていた。 「ん~、やっぱり夏は最高クマ。ずっと八月ならいいのにクマ~」 チェルキーが笑って肩をすくめる。 「またまた。八月ばっかりじゃ、サトウキビも育ちきらないよ」 少尉は紅茶を口に含み、真面目な顔で相槌を打つ。 「ええ、季節の移ろいもまた人の心を鍛えるものです」 ――そのときだった。 突如、上空からロープが垂れ下がり、ガクンと何かが降下してきた。 砂煙の中に立ち上がったのは、焼けた肌に食い込む黒サスペンダー、上半身裸、皮のトラザースを履いた一人の男。 胸には日焼けで浮き出たハートの刺青。 眼光はギラギラと冴えわたり、まるで世紀末の亡霊のようだ。 「――お前たちッ!八月を引きずるとは何事でありますかァッ!」 三人はグラスを持ったまま硬直した。 アートマン軍曹はサスペンダーをピシィッと鳴らし、鼻息荒く続ける。 「夏は去る!だが筋肉は裏切らん!サトウキビは刈られてもまた芽吹く!だがサスペンダーは一生であります!マーム、イエスマーム!!」 プーにゃんはストローをくわえたまま目をぱちくりさせ、チェルキーは耐えきれず噴き出した。 「な、なにあれ!? どこから来たの!?」 少尉だけは冷静に立ち上がり、軽く敬礼する。 「アートマン軍曹。……またヘリに便乗されたのですね」 軍曹は胸を張り、どや顔でサスペンダーを引き上げる。 「任務の一環であります!」 「……あのヘリ、貨物室にこっそりいたんだ」 チェルキーが小声でつぶやくと、プーにゃんは肩を震わせ、 「……この人どこかにいっちゃってるクマ……!」と呟いた。 ――夕暮れの砂浜に、サスペンダーの弾ける音と少女たちの笑い声がこだました。

さかいきしお

コメント (26)

Ken@Novel_ai
2025年09月08日 12時52分
Anera
2025年09月07日 20時47分
thi

軍曹に動じることなくタピオカを飲み続けています

2025年09月07日 13時33分
早渚 凪
2025年09月06日 15時34分
四ツ辻哀太郎(Aitaro)
2025年09月06日 13時56分
白雀(White sparrow)
2025年09月06日 13時23分
五月雨
2025年09月06日 13時12分
もぐっちー(mogucii)
2025年09月06日 12時28分

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