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ミリシラ様の異世界百景その28「ミリシラの研究室」
※この話の前日譚として、以下の投稿があります。御覧になっていない方は、一読いただけるとこの話の後半パートの経緯が把握できるかと思います。 ミリシラ様の異世界百景その19「ジャルダン自治区(梅)」 https://www.aipictors.com/posts/529679 地球の皆の者、こんクエスト~!全知全能の大賢者「ミリシラ・シッタカブール」じゃぞ! 今日はちと趣向を変えて、コネサンス魔法学園にあるワシの研究室を紹介する事にしよう。といっても、蔵書や魔道具をあれこれ紹介していると一週間ぶっ通しで喋っても終わらんから、この部屋がワシのものになった経緯やらを話すわい。 ワシは長年賢者として冒険者をやっておったが、パーティを組んでいた者が亡くなったり高齢化したりなどの理由で、冒険者を引退してこのコネサンス魔法学園の特別講師に就任したんじゃ。これまでの実績もあり、ワシは世界でも三本の指に入る大賢者として魔法界隈では有名人じゃった。ちなみにその三人とは、喋るだけでその内容を現実にしてしまう『ロード・オブ・ザ・ダベリング』シャベリー・ソールと、この世に存在する全ての呪文・魔術・聖術を習得した『全知全能』ミリシラ・シッタカブール・・・このワシじゃな。あと一人・・・こいつが思い出せん。いや、知っておるんじゃけど、あ奴の魔道具のせいで思い出せんのじゃよ。 あ奴はワシと同じエルフで、とにかくずっと魔道具の研究に没頭しており、この世界のほとんどの魔道具は奴が改良して使い勝手が大幅に向上したものばかり。ゴーレムの理論を根底から見直してこれまで大型の奴しか作れなかったのを小型高性能のものが作れるようにしてしまったり、部屋の気温をいつでも過ごしやすい温度に自動調整する装置を生み出したりとその功績は絶大じゃ。ただ、研究が好き過ぎて他人を拒絶しておってなぁ・・・誰も自分を訪ねて来ないように『自分の存在をはっきり認識させなくする』魔道具を使って名前や住所や顔を誰にも思い出せないようにしてしまったんじゃ。だから、いるという事は分かっておるんじゃがそれが何て名前でどんな奴だったのかがはっきりせんのじゃよ。 まぁ良い、話が脱線してしまったから元に戻すぞ。ええとつまり、ワシは偉人だったのでこの学園でも特別な個室が与えられる事になった。そこで、元々は図書館として使っていた部屋を譲り受けてワシ個人の部屋にしたって訳じゃ。新しい図書館はちゃんと学園に新設されておるから、生徒は主にそっちを利用しておる。ワシ個人の蔵書や古い本ゆえに新図書館に置いていない本を読みたい学生がワシを訪ねてくる事もあるがな。 そんな訳で、元々図書館だったこの部屋には大量の蔵書があり、さらにワシが極東遺跡群から持って帰ってきた旧文明の遺物や、魔法の研究に使う魔道具などが所狭しと置かれていて中々手狭じゃわい。その上学生の課題提出があると提出物がいっぱい来るからのぅ。いい加減、旧文明の遺物系はどっか別に部屋をもらった方が良いかも知れん。ちなみにワシはお昼ご飯もこの部屋で食べるぞ。学生食堂に行くと注目を集めてしまうからのぅ。 そうじゃ、そう言えば今朝ヒマリが『梅干し』を甕に入れて持ってきてくれたんじゃった。ヒマリの奴、「見ただけでよだれが口の中で分泌されるくらいおいしい」って言っておったし、今朝の時点でも自信作だと言っておったからのぅ、楽しみじゃわい。 さて、皿にたっぷりと盛り付けていただこうかの。・・・しかしこれ、わざわざ消臭魔法をかけた入れ物に入れて持ってきたのは何でなんじゃろう?見たところ赤紫のシロップに漬け込んであるみたいじゃし、本来はねっとりした甘い匂いがするのかもしれんな。本に匂いが移るかも知れんからその配慮か?いやぁ、さすが気が利く教え子じゃて。じゃあ早速、いただきますなのじゃ~! (パクッ!) 『すっっっっっっっっっっっっっっっぱぁああああぁぁああぁぁあぁぁあ!?!?!?』 (数分後、コネサンス魔法学園の廊下にて) 「み、ミリシラ先生!?ですよね?何ですかその仮面と刃物!?」 「さっき学園中にマンドラゴラの断末魔よりすごい絶叫が轟きましたけど・・・あれミリシラ先生の声っぽかったんですが、その恰好と何か関係が・・・?」 ヒマリの大バカ者はどこじゃ!!ヒマリ!出てこい!! 「ひ、ヒマリ氏なら『清廉』のライブに行くって今朝休学届を出して旅立ったでござるよ」 おのれ~!チケットが無くては入場できん人気アイドルのライブに逃げ込むとは卑劣な!だが逃がさん!ワシを謀った罪は重いぞ!とっ捕まえて尻の穴に梅干しをねじ込んでくれるわ! 「おいミリシラ先生ヤバイ事言ってるぞ」 「ミリシラ先生が廊下で変な仮面被って刃物振り回してキレ散らかしてるって学園長に報告した方がいいかな?」 「バカ、関わったら下手するとヒマリちゃんと同じ目に遭わされんぞ。知らんぷりしとけ」 おい生徒共!ワシはヒマリを追いかける、よって午後のワシの授業は全部休講! 「えー!?」 「新学期始まって一か月でそんな事あります!?」 ええいうるさいわ!とにかく行くったら行くんじゃ!というわけで地球人たちも今日はここまで! 見てくれてありがとうなのじゃ、おつカブール~! ええと今日の清廉のライブ会場は・・・よしルーラで行けるわい!覚悟せいヒマリ!
