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【長編12】何よりも守りたいもの

●SIDE:早渚凪 「つまり俺は、何も知らず奴らにいいように使われていたのか・・・!」 深海が悔しそうに唸る。とんだマッチポンプだったという事実を突きつけられたんだ、無理もない。 「そういう訳でね、深海君は本来執行猶予無しで極刑レベルの判決が下るだろうところを、条件付きで特別に猶予を付ける事になる。条件は深海君の知る全てのテロリンに関する情報の提供及びテロリンの作戦妨害を目的とした江楠真姫奈への従属。猶予期間は『テロリンの完全撲滅まで』だ。まあ一種の司法取引みたいなもんだと考えてくれたまえ」 「江楠さん、それってつまり、テロリンが無くなったら深海さんも裁かれるって事ですか・・・?」 向日葵ちゃんが心配そうに江楠さんに尋ねます。江楠さんはうむ、と頷きました。 「テロリンを壊滅させるのが第一だから生かしておくだけだからねェ。その目的を果たせば、深海君はただの凶悪犯だ。法廷の被告人席に立ってもらうよ」 「俺は構わない。感謝する、江楠」 江楠さんはああ言ったけど、これ実質協力すれば無罪って言ってるも同然だよな。江楠さんや深海が生きてる内にテロリンを壊滅させるなんてほとんど夢物語みたいなものだし。 「鈴白家の皆さんもそれでいいかい?大樹サンや瑞葵君には思うところもあるだろうが」 「・・・むぅ」 「まぁ・・・はい」 大樹さんは状況を考え渋い顔で頷き、瑞葵ちゃんも私の方をちらっと見ながらしぶしぶ承諾しました。多分、私の足をへし折ったの許してないなアレ。そして向日葵ちゃんは、深海の方に踏み出しました。 「・・・深海さん、私は深海さんを支えたいと思います。一緒にいさせて下さい」 深海や大樹さんがぎょっとした顔で驚きます。江楠さんはにやりとほくそ笑みました。 「やめなさい向日葵!この男と一緒にいれば、またテロに巻き込まれるぞ!」 「そうだ、向日葵さん。君を危険な目に遭わせたくない。君を守ると約束しただろ、危険に近づくのはやめてくれ」 「深海さんの力になりたいんです。テロ組織と戦うなんて、普通じゃないすり減り方するの目に見えてますよ。ただでさえ今の深海さん、罪の意識に苛まれてていつメンタル折れるか分かんないのに放っておけません」 ぐぬ、と深海が言葉に詰まります。深海、責任感強いからなぁ。そうじゃなければ、そもそもネットで叩かれたくらいでテロリストに舵取りしないし。 「深海君、守ると約束したんなら近くにいてもらった方がいいんじゃないかい?手が届かなきゃ守れないぞ」 江楠さんの援護射撃。これに渋い顔をするのは大樹さんです。 「私は反対だ。本人が改心していようが、テロリストと戦う以上その身内に危険が迫るのは明白。向日葵を・・・可愛い娘をわざわざ危険に晒すなど考えられない」 大樹さんからすれば当然の主張です。手塩にかけた娘をよりによって犯罪者に、って考えてるんでしょう。深海は少し考え、諦めたような溜息をつくと大樹さんに話しかけます。 「大樹さん。・・・向日葵さん、言い出したら聞かないタイプでしょう。多分強引に引き離しても、一人で勝手に追いかけてくると思えますが」 深海の言葉に、大樹さんは苛立ちを露わにした顔で深海を睨みつけます。なまじ正解だから余計に頭に来てるみたいです。 「だったらどうする。貴様が責任を持って向日葵を守るとでも言うのか?世間に叩かれた程度でテロリストに身を堕とし、策略だったと分かれば手の平を返して善人ぶるような変節漢を信頼しろと?私や向日葵を馬鹿にしているのか!」 「お父さん!そんな言い方ひどい!」 抗議の声を上げる向日葵ちゃんですが、深海はそっと大樹さんの前まで進み出ました。 「ご心配はもっともです。向日葵さんを見ていれば、大樹さんがどれほど彼女を大切に育てて来たか想像はつきます。その上で言わせてもらいます。向日葵さんは、俺が守る。どんな危険からも、どんな悪意からも、守り抜いて見せます」 「口では何とでも言えるわ!」 凄まじい剣幕の大樹さん。しかし、深海は全く動じませんでした。 「確かにこの場で能力を示す事はできません。ですが、彼女は俺に『守りたいという気持ち』を思い出させてくれた人です。俺にとっても、この命に代えても守るべき大切な女性(ひと)です。約束したからじゃない、俺が向日葵さんを守りたいと強く想っているんです。彼女が俺についてきてしまうなら・・・俺は、向日葵さんの一番近くで彼女を守り続ける。例え他の何を裏切ったとしても、この想いだけは譲らないと誓います!」 ふ、深海かっこいい・・・もはやプロポーズ並みの事言ってる自覚あんのかな。向日葵ちゃん感極まってるし。 「・・・」 大樹さんは押し黙り、じっと深海の目を鋭く覗き込みます。深海も一歩も引かず、その視線を受け止めて、そしてどれほど静寂が続いたか。数秒だったのかも知れませんし、数分経ったのかも知れません。それは大樹さんによって破られました。 「・・・向日葵。盆と正月くらいは彼と一緒に顔を見せなさい」 「っ・・・はい!」 おお、『娘に近づく男絶対に〇すマン』って言われてる大樹さんが認めた!深海、お前本当に大した男だよ。 「よし、話はまとまったねェ。深海君には後日新しい勤め先やらの詳しい話をさせてもらうよ。まあまずは療養するんだね」 部屋に張り詰めていた緊張がほどけました。いやぁ、私も思わず手に汗握ってしまった。大樹さんは瑞葵ちゃんに向き直りました。 「寂しくなるな。瑞葵、これからは二人での生活になるだろうから色々大変だぞ」 「あ、お父さん。もしかしたら私も近々お嫁さんになるかも?」 再び部屋に緊張が。何で今このタイミングで言うの瑞葵ちゃん。大樹さん石になってるじゃん。 「紹介するね。私の彼氏の早渚凪さんです♪」 やめて。今ベッドの上から動けないの。もし大樹さんが襲ってきても避けられないの。 「なっ、な、なななんだとききき貴様、きっきさ、貴様が、瑞葵の、かかか彼氏だだだと!?」 ヤバイ、過去一の動揺っぷりを見せてる。これじゃ本当に何するか分かんない。 「あ、あと凪さんに言っておかないとっていうのがありまして。・・・陽性でした♡」 ようせい?陽性・・・えっ、え、まさか!?嘘でしょ!? 「ぬうううううーーーーーーっふ!」 あああ、大樹さんが泡噴いて倒れた!長女がよその男のところに行って次女に子供が出来たとなっちゃ無理ないけど!てか私も気絶したいくらいなんですが! 「冗談だったのにー」 「瑞葵アンタ、今その冗談シャレにならないって!お父さん、しっかり!な、ナースコールしないとかな!?」 冗談だった・・・?し、心臓止まるかと思った。心当たりあるからなおさら。 「あー、今日はもう出直すか。じゃあな早渚君、深海君。また後日」 江楠さんがさっと逃げた後も、しばらく病室は混乱していました。

コメント (10)

クマ×娘 D.W
2025年10月18日 20時09分

早渚 凪

2025年10月19日 02時14分

mooooooooo1230
2025年10月16日 20時08分

早渚 凪

2025年10月17日 14時20分

五月雨
2025年10月16日 12時52分

早渚 凪

2025年10月16日 14時11分

しるばん
2025年10月16日 10時28分

早渚 凪

2025年10月16日 14時11分

へねっと
2025年10月16日 07時35分

早渚 凪

2025年10月16日 14時11分

gepaltz13
2025年10月16日 04時47分

早渚 凪

2025年10月16日 14時11分

白雀(White sparrow)

お労しや義父上

2025年10月16日 03時43分

早渚 凪

上司の代わりにパーティーに出る為、残業をしまくり自分の仕事を片付けて、ようやく乗った豪華客船はテロの舞台となり、挙句愛娘二人にそれぞれ男が現れるという地獄みたいなコンボ

2025年10月16日 04時09分

翡翠よろず
2025年10月15日 23時36分

早渚 凪

2025年10月16日 04時07分

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2024年7月よりAIイラスト生成を始めた初心者です。 基本はオリジナルキャラで、まれに二次創作作品を投稿します。オリジナルキャラに関しては、エロ系・グロ系含み完全コラボフリーですので気軽に連れて行ってください。 年齢区分は全年齢~R-15を中心に投稿します。R-18作品もたまに投稿しますが、現在はサイト内生成のみでイラスト生成を行っていますので、規約違反を含むR-18作品(性器描写等)は投稿できません。 ストーリー性重視派のため、キャプションが偏執的かと思いますがご容赦願います。

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