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【ソックス】激臭ソックスカンク!悪臭はイヤ~!
「ソックサッ!」 ヤバーイ出現アラームを受けた私たちが公園に駆け付けると、そこには獣人みたいな怪物がいた。・・・えっと、あれなんだろう。 「ロジカル、フィジカル。あれ何の動物かな」 「知るか」 「むぅ。ワレにはスカンクに見えるが」 スカンクかぁ。珍しい動物が素材の怪人だね。 「ぬ~ふ~ふ~、その通りなんだな。あれはバラバラヴァーが作った『ソックスカンク』なんだな」 「わわ、ニックジール!」 ずんずんと進み出てきたのはニックジールだ。見たところ口の周りに血がついてたりはしないから、今日はまだ人を食べたりしてない・・・といいな。 「ソックスカンクだァ?あー、よく見りゃあ指ぬき靴下履いてやがんな」 「見ての通り、靴下とスカンクの合成獣なんだな。そしてその能力は・・・今体験させてやるんだな!」 ニックジールが叫ぶと、ソックスカンクがこっちにお尻を向けた。そして凄い悪臭を放ってきた! 「きゃああ!く、臭いよぉ!」 「ゲホッ、ゲホッ!このくそったれが!」 「ヌゥーッ、これはたまらん!」 た、確かスカンクって臭い分泌液を出して外敵を追い払うんだったっけ。でもこの臭い、何か嗅いだことある気がする。 「ぬ~ふ~ふ~、ソックスカンクは『臭い靴下』の臭いを一万倍に濃縮して放つ攻撃が出来るんだな。弱点は狭い所や風下で使うとこっちが臭い思いをするところだけど、その辺りはちゃんと考えて場所を選んだんだな~」 それだ、お父さんの洗ってない靴下の臭いだ。うぅ、目に染みるよう。早くやっつけないとシャワー浴びても悪臭が取れなくなっちゃいそう。 「くそっ、ぶっ殺してやる!」 「おっと、やめておく方がいいんだなロジカル。ソックスカンクは倒されると自爆して、周囲に悪臭を一気に大爆発させるんだな」 「あァ!?この間のドクドクターと一緒かよ!」 ドクドクターかぁ、あれもウイルスを撒き散らす怪物だったっけ。じゃあ、あの時の魔法が使えるかも! 「リリカル・キュアブリーズ!」 浄化の風の魔法で、周囲を吹き払う。きつかった臭いが薄れて、何とかまともに息が出来そう。でも、ソックスカンクはまたこっちにお尻を向けてる。このままじゃイタチゴッコだよ。 「させぬ、宇宙まで放り投げてくれるわ!」 フィジカルが素早く飛び出してソックスカンクに組み付いたけど、ソックスカンクは待ってましたと言わんばかりに凄い悪臭をフィジカルに集中砲火した。 「ヌガアァア!」 フィジカルはあまりの臭さに悶絶して、気を失っちゃった!幸い変身は解けてないけど、ニックジールの近くで気を失ったりしたら・・・! 「ぬ~ふ~ふ~、隙だらけなんだな。マジカヨフィジカル、そのお肉いただきます、なんだな!」 ニックジールはずんずんとフィジカルに歩み寄って、掴んで持ち上げた。あーんと大きく口を開けて、フィジカルにかぶりつこうとする。 「や、やめてー!」 私は思わず叫んだけど、ニックジールは構わずフィジカルに噛みつく。 「ぬぶぼぇええええ!」 と思ったら、噛みつく寸前で悲鳴を上げてフィジカルを放り出した。ど、どうしたんだろう。 「く、くっさいんだな!ソックスカンクの悪臭が染み付いてて、とても食えたもんじゃないんだな!は、鼻が曲がるんだな~!」 ・・・あー、そ、そうだよね。私だって靴下のすえた臭いのする食べ物なんて、とてもじゃないけど食べられないもん。 「バカヤロー、なんでそうなるって予想もできねぇんだニックジール!テメェ何がしてえんだよ!」 「う、うるさいんだな!おのれ、今日のところはこの辺にしておいてやるんだな!」 ニックジールがソックスカンクを置いて帰ろうとしてる。いやいや、こんな怪物置いて行かないで! 「ソックスカンクも連れて帰ってあげてよ!可哀想だよ!」 「こんな臭い奴連れて帰りたくないんだな!」 「ソックサッ!?」 あ、ソックスカンクがショック受けてる。臭いの、一応気にしてるんだ。なんか可愛いかも。 「あー、分かった分かった。オイ、ソックスカンク。これ飲めよ。オレがリリカルの浄化魔法を解析して作った薬だ。これ飲めば、しばらく体臭が臭くなくなるぜ」 ロジカルがソックスカンクに薬を渡した。ソックスカンクはそれをクンクンと嗅いでいたけど、ぐっと飲み干した。 「ソックサー!」 「ニックジール、これでいいでしょ!連れて帰ってあげて!」 「・・・ぬぅ、分かったんだな。ほら、来るんだな」 ニックジールはソックスカンクと一緒に転移魔法で帰っていった。ロジカルはベンチに座るとスマホ端末の画面をじっと見てる。何だろう。 「ロジカル、どうしたの?」 「いや、薬を渡す時についでにアイツの体に偵察機を取り付けたんだ。本拠地の様子が見られるかと思ってよ」 「帰ったんだな~」 「ソックサ!」 暗いダンジョンみたいなところにニックジールがいるのが見える。バラバラヴァーが向こうからやってきた。 「ソックスカンクが生存?もしかして勝ったの!?」 「いや、こいつがフィジカルを悪臭で気絶させたまでは良かったんだけど、フィジカルが臭くなっちゃって食べられなかったんだな。それで今日はもう諦めて帰って来たんだな」 「アンタ何しに行ったのよ!マジカヨを倒すのが目的でしょうが!」 バラバラヴァー怒ってる。だよね、あのまま戦ってたらニックジール勝ってたよね。こっちはフィジカル戦闘不能なんだもん。 「さて、ショータイムだな」 ロジカルがにやっと笑った。 「オレが飲ませたのはな、浄化魔法の薬なんかじゃねェ。悪の魔力に反応して、時限式で爆発する魔法薬だ」 「えっ」 画面に目を戻すと、ソックスカンクの苦しそうな声が聞こえてくる。 「ソッ、ソッ・・・!」 「えっ、どうしたのソックスカンク!」 「なんか様子が変なんだな」 異変に気付くバラバラヴァーとニックジール。そして。 「ソックサーッ!」 断末魔を上げて、ソックスカンクが爆散した。大量の悪臭を撒き散らして。偵察機が床に落ちたけど、幸い様子は見える角度で落っこちた。 「ぬぶぼぇええええ!くせぇんだなぁ~!」 「ぎゃあああああ!目が、目があぁあ~!」 間近で悪臭を喰らって、転げまわる二人。強い悪臭で目がやられたみたい。 「ケッケッケ、いい気味だぜ。あんな閉塞感あるアジトじゃ、全域が汚染されただろうなこりゃ」 なんかロジカルの方が悪党みたいな事やってるよね。さすがに可哀想かも。 「さて、さっさと銭湯でも行こうぜ。臭くてしょうがねェ」 「そ、そうだね。これで家に帰ったら怒られちゃいそう」 私たちはフィジカルを起こして、皆で銭湯に向かう事にした。すっごいしつこい悪臭だったけど、何とか落とせたよ。・・・次にバラバラヴァーやニックジールと会った時、あの二人から臭いがしないといいなぁ。
