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【長編13】再出発

●SIDE:早渚凪 瑞葵ちゃん達が帰った後は、玄葉や幽魅、それに晶さんや花梨さんにコマメちゃん、桃宮ちゃんや橙臣ちゃんもそれぞれお見舞いに来てくれました。深海からは「お前の女性関係はどうなってるんだ」という目で見られましたが。 それから一週間ほどして、深海の退院の日がやってきました。あれだけ銃で撃たれたり腕を切ったりしていたのに、もう病院での経過観察がいらないとはつくづく頑丈な奴です。もちろん、元テロリストの深海本人だけで病院を出す訳には行かないので、江楠さんが引き取りに来ています。 「まぁ、深海君がどこに行こうが位置情報は掴めるようにしてあるがねェ。ここの医者は私の息がかかっている、手術の際に深海君の体には発信機を埋め込ませてもらったよ」 「江楠さん・・・あなたらしいですよ、そういうの」 深海が気にしないならいいけど、かなりプライバシーの侵害だよねソレ。 「俺は構わん。信用されなくても仕方がない」 「君が裏切る可能性はほとんど考えていないがねェ。どっちかというと、拉致殺害される可能性を危惧しているよ。幹部が裏切ったとなれば、追手がかかっても全く不思議はない」 確かに、それは危険だ。深海だけでなく向日葵ちゃんも危ない。本当に大丈夫なのかな。 「江楠、お前はエリスロの事をどこまで把握している?」 「・・・ああ、やはり彼女はそうなのか。何となくきな臭いとは思っていたがねェ」 「エリスロって・・・天ノ杓さんですか?彼女が何か関係してるんですか?」 私が問いかけると、深海はそっと口を開いた。 「早渚、江楠。日本には二人、テロリンの幹部がいる。一人は俺、もう一人は天ノ杓エリスロだ」 「あ、天ノ杓さんが・・・テロリン!?そんな、何回か会ってるけどそんな素振りは一度も」 「ちょっと会ったくらいでバレるような迂闊な人間がテロ組織の幹部なんかできるものかね。第一、君は友人である深海君の事すら見抜けてなかったじゃないか」 そう言われるとぐうの音も出ません。・・・何か幽魅といい、私の周りテロリンの関係者多いなぁ。 「エリスロは俺に良い感情を持ってはいない。特に作戦行動が無ければ、俺を始末する動きをとるだろう。できれば、今の内に潰した方がいい」 「潰すって・・・」 それつまり、天ノ杓さんを殺すって事だよな。警察に引き渡したとしても、罪状的には多分死刑になるし。 「それだが、そうなると日本の幹部が一人もいなくなる。テロリンの動きが掴みにくくなる上、下手すると上の人間がいなくなってタガの外れた連中が暴挙に出るかも知れん。彼女に関しては泳がせておくさ。無論、作戦行動の妨害はさせてもらうがねェ」 「・・・成程な。エリスロの役目はアイドルとして作戦域に人を集めるエサ、または作戦域から目を逸らさせる陽動だ。どうしたってファンへの告知なしには動けないからな。これ以上ないくらい動きを掴みやすいわけか」 「その通り。その内こっちの妨害に対処するためテロリンと関係ないライブばかりやるようになるかも知れんが、それならそれで構わん。他の情報と組み合わせれば、天ノ杓エリスロに注意すべき状況かどうかはすぐ分かるからねェ。むしろ、紅の動向が気になるところだ。奴は船と共に海に消えたが、これまでのケースを考えると十中八九生きているだろう」 やっぱり、最後まで脱出しなかったのか。連日ニュースを見ていたけど、中継映像からじゃ紅の様子までは分からなかったんだよな。 「深海君、やはり奴は不死身なのかい?」 「本当に死なないかどうかは知らんが、人間離れした回復力を持っているのは事実だ。前に目の前で見たが、大怪我をしても数日で治るんだ。こう、傷口のあたりから塵のようなものがサラサラと出てきて、それが出なくなる頃には傷も消えている」 人間じゃないでしょう、それは。・・・あれ、待てよ。何だか前に似たようなものを見た気がするけど。 「・・・塵、だと?まさか・・・同じ、なのか?そう考えれば、奴の血痕がいつの間にか消える理由の説明もつく・・・しかし、確かめようにも物証がない。参ったねェ、深海君は奴の髪の毛とか持っていたりしないかい?」 「持っている訳無いだろう。常識で考えて、何で紅の体の一部を持ち歩く必要があるんだ」 「だよねェ」 体の一部・・・あ。 「江楠さん、私が船に乗っていた時の服、まだありますか?」 「病室のクローゼットにかけてあるよ。クリーニングはしてないから汚れてるがねェ」 「その服のポケットに、紅の奥歯が入ってるはずです」 「!」 江楠さんはすぐにクローゼットを開けて、私のスーツのポケットを探ります。程無くして、目的のものが見つかったようです。少し高揚した顔で紅の奥歯を握りしめました。 「これが奴の奥歯・・・でかしたぞ早渚君、奴の不死身の秘密に迫れるかもしれん。これ、貰っていいんだろうね?」 「私が持ってても役に立たないので、いいですよ」 江楠さんは小さなビニール袋に紅の奥歯を入れると、自分の懐に仕舞った。何に使うのか分からないけど、江楠さんならきっと役立てる事が出来るんだろう。 「さて、思わぬ収穫もあった。深海君、そろそろ行こう。早渚君の負担になっても良くない。早渚君の退院は数か月先、リハビリも考えれば日常生活への復帰には一年以上かかるだろう?」 「そうだな。すまん早渚、あの時は殺すつもりだったからそんな大怪我を負わせてしまった。俺に償える事があれば何でも言ってくれ、必ず力になる」 深海はそう言って私に頭を下げますが、多分そんなに私に構ってはいられないはずです。深海自身がこれから一番大変だろうから。 「私に申し訳ないと思うなら、必ず向日葵ちゃんを守り抜け。あの子に何かあったら、その時こそ絶対にお前を許さないからな」 「・・・ああ」 言うまでもなく、深海なら向日葵ちゃんを守り抜くだろう。江楠さんは私たちのやり取りを見てにやりと口角を上げた。 「その向日葵君だが、既に深海君の新居で退院祝いの料理を準備しているはずだよ。精の付く食材を買い込んでいた」 「怪我はもうそこまで大した事無いんだがな・・・」 ・・・深海、多分だけど向日葵ちゃんが考えてるのはお前の怪我の事じゃないぞ。お前が『やっぱり俺と一緒にいるべきじゃない』とか言い出せない状況を作ろうとしてるようにしか思えない。深海の事だし、一度関係を持ったらもう突き放せないだろう。本気だな向日葵ちゃん。 「ではな、早渚君。何かあったら連絡したまえ」 「俺も時間が許せば見舞いに来るからな」 そう言って二人は病室を去りました。さて、長い入院生活になりそうだな。

コメント (9)

mooooooooo1230
2025年10月19日 20時31分

早渚 凪

2025年10月20日 01時04分

white-azalea
2025年10月17日 16時18分

早渚 凪

2025年10月18日 14時58分

五月雨
2025年10月17日 13時37分

早渚 凪

2025年10月17日 14時30分

翡翠よろず
2025年10月17日 11時30分

早渚 凪

2025年10月17日 14時30分

しるばん
2025年10月17日 09時28分

早渚 凪

2025年10月17日 14時30分

白雀(White sparrow)

既成事実作るつもりか!?

2025年10月17日 03時50分

早渚 凪

よく考えたら向日葵ちゃんは「あの」瑞葵ちゃん(性欲魔人)の双子の姉ですからね。 そんでもって、歴代彼氏たちとは貧乳バレを気にして肉体関係を持てなかったけど、深海は既にパッドの秘密を知っているという事もあり、そこのハードルもありません。 そんな状態で同棲生活スタートするんですから・・・そりゃもう、ねぇ?

2025年10月17日 14時29分

もみ
2025年10月16日 21時55分

早渚 凪

2025年10月17日 14時26分

gepaltz13
2025年10月16日 21時16分

早渚 凪

2025年10月17日 14時26分

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2024年7月よりAIイラスト生成を始めた初心者です。 基本はオリジナルキャラで、まれに二次創作作品を投稿します。オリジナルキャラに関しては、エロ系・グロ系含み完全コラボフリーですので気軽に連れて行ってください。 年齢区分は全年齢~R-15を中心に投稿します。R-18作品もたまに投稿しますが、現在はサイト内生成のみでイラスト生成を行っていますので、規約違反を含むR-18作品(性器描写等)は投稿できません。 ストーリー性重視派のため、キャプションが偏執的かと思いますがご容赦願います。

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