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閃光のミラージュ【煌めく夜に、少しだけ素顔】
冬の夜、街は光の粒で満たされていた。 ツリーの灯りが建物の窓に反射し、雪のような輝きを作り出す。 その中心で、いつもの鋭さとは違う表情を浮かべる劉妃がいた。 白いニットに黒のアウター、 控えめなメイクは彼女の本来の透明感をさらに引き立てている。 「……たまには、こういうのも悪くないわね」 手にした自撮り棒を軽く上げ、 カメラへ向けて指でピースサイン。 任務でも戦闘でもない、ただの散歩。 それなのに、彼女の仕草のひとつひとつが どこかぎこちなくて、どこか可愛い。 撮った写真を確認して、 劉妃は小さく笑った。 「ふふ……意外といい感じ」 街の灯りが彼女の髪を照らし、 青いリボンがひらりと揺れる。 普段の彼女なら、 「無駄な目立ち方は厳禁」と言うところだろう。 だが今夜だけは、 誰かの視線を少しくらい浴びても構わない気分だった。 通りを歩くカップルや家族たちが楽しげに笑う中、 劉妃はふと立ち止まり、 明るく輝く街並みにレンズを向けた。 次の瞬間、 カメラ越しに映る自分の笑顔が、 ほんの少し柔らかく見えた。 「……記念に、もう一枚」 そう呟いて、 彼女はもう一度だけピースサインをつくった。 その仕草は、 誰が見てもただの“普通の女の子”だった。
