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【牙】ハチクロ~ハチドリとクロコダイル~
熱帯雨林の密林で見られる自然の情景。河を悠然と泳ぐのはクロコダイル(ナイルワニ)です。 河付近では強大な捕食者として知られており、大型のものになるとイノシシやライオンまで襲う事もあります。 そんなクロコダイルの元に、ぶんぶんと音を立てて鳥が飛んできました。ハチドリです。 クロコダイルはハチドリに気付くと、ぱか、と大あごを開いて鋭い牙を見せつけました。でも、これは威嚇じゃ無いんです。 ハチドリは、つんつんとクロコダイルの歯の隙間をつつき始めました。クロコダイルの口に残った、食べかすを掃除しているのです。 クロコダイルは口の掃除をしてもらい、ハチドリは餌にありつきつつクロコダイルに外敵から守ってもらう。これは素敵な共生関係だったのです。 この組み合わせは通称『ハチクロ』と呼ばれており、心温まる友情の風景として人々に親しまれています。 ・・・などという事実はありません。そもそも、ハチドリは花の蜜が主食で、あとはたまに昆虫を食べるくらい。ワニが食べるような獲物の肉は食べません。 現実でナイルワニの背中に乗っているのはハチドリではなく『ナイルチドリ』。どちらも名前に『チドリ』が入っていますが、全く別の種類です。 そしてそのナイルチドリですら、ナイルワニの口を掃除するという正確な記録はありません。そういう話があるというだけで、言い伝えの域を出ないのです。 実際に見てみたいと思っている方は、研究者ですら確認できていないという事を念頭に置いたうえでワニのところに行ってください。もちろん、食べられないように気を付けて。
