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巨大独楽式ジャイロスタビライザー
研究室の一角。机の上には古い書類や測定器、隅には色とりどりの小物が積まれている。 ブロント少尉は、真剣な面持ちで立っていた。手には、どう見ても普通の独楽を巨大化したような和風の独楽を抱えている。 「こ、これは……ジャイロスタビライザーッ!!」 少尉の声には一切の冗談はなく、額には汗がにじむ。まるでこの巨大独楽こそが、未来の陸軍戦術を変える装備であるかのように扱っていた。 足元には、黒猫――ケティが座り込んでいる。小さな独楽を目の前に置くと、ちょいちょいと前足でつつき、軽く回転させてはじっと観察している。 少尉は後ろを振り返ることなく、独楽を両手で回し始めた。回転する巨大独楽を前に、目を輝かせてこう呟く。 「これで私も……サムライに……なるのだ……!」 しかし、その様子を背後に、ケティはいたって冷静。 回る小さな独楽をちょいちょいする仕草に夢中で、巨大独楽の存在にはまるで興味がない様子だ。 「……こっちのほうが面白いにゃ」 少尉は、後ろから誰かの声が聞こえたような気がして、少し顔を赤らめて振り返る。 「うにゃ?」 黒猫が尻尾を揺らすだけだが。 だが、もちろん冗談ではない。これは真面目な科学実験であり、未来の戦術検証なのだ――少尉の中では。 回転する巨大独楽、ちょいちょいするケティ、そして真剣そのものの少尉。 部屋には、ちょっとだけシュールで、でも完全に彼女にとっては真剣な空気が漂っていた。 「ふふ……これを搭載すればわが軍の性能は3倍になる!!」 ケティは無言で、ただちょいちょいと独楽をつつき続ける。 こうして、世界初(少尉基準)の巨大独楽式ジャイロ実験は、静かに、しかし確実に進行していたのだった。
