閃光のミラージュ 番外編【豆の音が、幸せを呼ぶ夜】
玄関の扉が開いた瞬間、エリックは何も言わずに鬼のお面を被った。 それは合図——この家の小さな“節分の儀式”の始まりだ。 「おにはそとー!」 両手いっぱいの豆を抱えた子供が、きらきらした瞳で駆け出す。 鬼のふりをしたエリックは大げさにうなり声をあげ、 床に転がる豆を踏まないよう、わざとらしく後ずさる。 その様子を、劉妃はエプロン姿で静かに見守っていた。 微笑みは穏やかで、目尻には春の気配。 家に満ちる笑い声と豆の音が、外の寒さを忘れさせる。 最後に、子供の小さな手がもう一粒。 エリックが負けを認めてお面を外すと、拍手と笑顔が部屋いっぱいに広がった。 鬼は追い払われ、福は、すでにこの家の真ん中にあった。
