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閃光のミラージュ 番外編【豆は雷となり、夜を祓う】
昼の街を、翠蓮はひとり歩いていた。 黄色いスカーフが風にはためき、白銀の髪が揺れる。 手にした一合枡から豆を一粒つまみ、口に運ぶ―― それはただの習慣、何気ない節分の風景だった。 けれど、空気が変わる。 人のざわめきは遠のき、路地の奥から黒い影がにじみ出す。 赤い目、歪んだ気配、笑い声のない足音。 街は次第に、邪悪な雰囲気に包まれていった。 翠蓮は立ち止まり、静かに息を吐く。 もう一粒、豆を噛み砕く音が響いた瞬間―― 彼女の瞳が鋭く光った。 「……鬼は、ここまで」 枡を掲げ、腕を振る。 豆が宙を舞い、その軌跡に黄金の雷が走る。 放たれた一粒一粒が、雷撃となって鬼を撃ち抜く。 「鬼は外――!」 衝撃波とともに影は砕け、悲鳴は夜に溶けた。 残るのは、再び灯りを取り戻した街と、 静かに揺れる黄色のスカーフ。 翠蓮は何事もなかったように歩き出す。 豆の音だけが、福を連れて、アスファルトに転がっていた。
