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閃光のミラージュ 番外編【海で鯛焼きが釣れる日!?】
潮風が穏やかに吹く昼下がり、翠蓮は防波堤に立ち、静かに竿を構えていた。 黄色いスカーフが揺れ、銀の髪が陽光を反射する。 ――今日は、ただの気分転換。何も起きない、はずだった。 ピクリ、と浮きが沈む。 手応えは軽い。小魚だろう。 そう思って巻き上げた瞬間、海面から現れたのは――鯛焼き。 「……え?」 金色の焼き目、ぱっちりした目。 どう見ても魚ではない。 翠蓮はしばし沈黙し、青い海と鯛焼きを交互に見比べた。 「そんな事、ある……?」 波が跳ね、鯛焼きは水滴を弾く。 生きているわけでも、泳いできたわけでもない。 それでも確かに、釣れた。 翠蓮は苦笑し、そっと受け止める。 「今日は……甘い日、ってことね」 空は晴れ、海は静か。 理屈は海に置いておこう。 世界には、たまに――説明不能な幸運が釣れる日もあるのだから。
