1 / 5
雪灯りの帰り道………【天城瑠奈・霧島紗耶】
粉雪が静かに舞い落ちる繁華街。 ネオンはにじみ、足音は雪に吸われて、街はいつもより少しだけ優しい表情をしている。 ルナ――本名を天城瑠奈という彼女は、この夜だけは仕事の仮面を外し、親友の霧島紗耶と肩を並べて歩いていた。 耳当て越しに聞こえる笑い声、何気ない会話。 それらは確かに温かく、確かに本物だった。 紗耶はいつも明るく、何も疑わず、「今日は楽しかったね」と笑う。 瑠奈も笑い返す。 でもその笑顔の奥で、瑠奈は小さな胸の痛みを抱えていた。 ――この時間が、ずっと続けばいいのに。 ――それでも、言えないことがある。 雪が強くなり、二人は立ち止まって写真を撮る。 ピースをする紗耶、少し照れたように微笑む瑠奈。 カメラに収められるのは、“何も知らない親友同士の幸せな一瞬”。 別れ際、紗耶は振り返り、いつもの調子で手を振った。 瑠奈は小さく手を振り返しながら、心の中でそっと呟いた。 「またね……今は、瑠奈でいる私」 雪は降り続ける。 満たされない想いを、何も知らない顔で包み込むように。
