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蒼穹のフロンティア【雨の静寂に沈む白き勇翼】
戦闘は終わった。 だが、勝利の余韻などどこにもなかった。 かつて人々が暮らしていた都市は、 いまや瓦礫の山と化し、 冷たい雨だけが静かに降り注いでいた。 アリシア・ヴァレンタイン大尉は、 壊れたビルの影で立ち尽くし、 雨に濡れた前髪の向こうで、 深く沈んだ瞳を伏せていた。 胸を締めつける痛みは、 敵の攻撃によるものではない。 救えなかった命、 守りきれなかった街、 そして戦い続けるしかないという現実―― それらが彼女の心を静かに蝕んでいた。 雨粒がスーツを伝い落ちるたびに、 心の奥に溜まった悲しみまで 少しだけ流れていくような気がした。 「……こんな戦い、もう終わらせたい。」 誰に届くとも知れない小さな呟き。 しかし、その声には まだ折れていない“強さ”と“願い”が宿っていた。 壊れた世界の中、 アリシアは再び歩き出す。 雨に濡れた白い背中が、 静かに、確かに進んでいく。
