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蒼穹のフロンティア【沈みゆく空に、静かな涙を……】
廃墟と化した都市を、 ゆっくりと夜が飲み込もうとしていた。 燃えたように赤い夕陽が瓦礫の影を伸ばし、 その光はアリシアの横顔を 柔らかくも切なく照らしていた。 戦闘は終わった。 しかし彼女の胸の奥で燃え続ける痛みは、 夕陽の炎よりもずっと熱かった。 「……守れなかった。」 その言葉は声にならず、 ただ心の中で静かに波紋を広げる。 瓦礫の山、崩れたビル、 吹き抜ける焦げた風―― ここには人々の生活も笑い声も、 もうどこにも残っていない。 アリシアは壁に背を預け、 夕陽の中でそっと目を伏せた。 夕焼けの光が彼女の淡い銀髪を照らし、 その光はまるで 「まだ終わっていない」と語りかけるかのようだった。 戦場で何度傷ついても、 胸が張り裂けそうになっても、 アリシアは歩みを止めることはない。 失ったものの重さを背負いながら、 それでも前へ進む。 ――あの日救えなかった誰かのために。 ――そして、いま守ると誓った 大切な誰かのために………。 夕陽が沈みゆく廃墟の中、 ひとり佇む白いパイロットスーツの影は、 弱く揺れながらも、確かに強く在り続けていた。
